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スタンダード会員限定知って得する建物の豆知識(71) メタボリズム 建築の新陳代謝

住宅新報 2011年10月4日 号 4面

管理(賃貸・分譲)

 耳に痛い「メタボ」という言葉ですが、正しくは「メタボリックシンドローム」と言い、単なるデブではなく病気の一種です。

名だたる建築家が傾倒

 ところで、「メタボリズム」とは新陳代謝を意味していますが、建築的には60年代に日本で起きた建築運動です。今日のようにメディアが発達した時代では、建築家個人のスタイルが模倣を生んで一定の流れを作ることはあっても、建築運動にはなり得ませんが、当時はお先走りの建築雑誌編集者などが神のごとく「言葉(キーワード)」を提示すると、建築家たちは一斉にその方向に突っ走った時代でした。

 これは文壇や画壇にも似た所があったと思います。そして、その神のごとき言葉には「縄文・弥生」「伊勢神宮」「輪廻転生」などがあり、その掉尾(とうび)を飾ったのが「メタボリズム」でした。現在、六本木の森美術館で開催されている「メタボリズム展」(12年1月15日まで)では、そうした時代に建築家がどのように突っ走ったのか、その成果が一堂に展示されています。

 メタボリズムのイメージは、生物が新陳代謝するように建築や都市が環境に対応しながら、生成と消滅を繰り返して増殖するというものでした。この運動に巻き込まれたのは、大御所丹下健三を筆頭に菊竹清訓、黒川紀章、磯崎新、槇文彦、大高正人など、まさに当時のスター建築家の面々でした。このスター建築家と建築メディアが一体(持ちつ持たれつ)になって、「メタボリズム」運動を繰り広げたのです。

観念的な作品世界

 森美術館では、その運動の成果を映像・図面・模型などで多面的に展示しています。今日的視点から見ると、どの作品もとても観念的で機械的です。生物という有機物を部品の集積で構成できるという一種の健康的=幼児的な観念が支配していたことがよく分かります。ジョイント機能を持つ立体部品を「葉」に、構造体を「幹」に見立て繰り返すのがすべてに共通する概念なのですが、日本の伝統美を構成する要素「破」を取り込んでいるところまで全員に共通しているのは、見ていてチョット『痛い』レベルではありました。

 ちなみに「破」とは、例えば石碑を作る場合、石工はすべての面を平滑に仕上げ、最後に「破」を加えます。本紙掲載の写真で言えば中央の欠落です(もちろんこんな大げさな「破」はあり得ません)。あまりに完璧なものは「あの世のもの」であるため、「破」を加えることによって「この世のもの」に引き戻すわけです。あえて、不完全さの中に高次の完成度を求めるという、日本独特の美意識です。

 いずれにしても、このメタボリズム運動はその後の高度成長の原動力になったことは確かで、その高度成長がバブルを生み、原発を作り、それらが弾けて今日があるとも言えます。余談ですが、筆者が若い頃に在籍していた建築事務所で描いた図面が展示されているのを見たときは、感慨ひとしおでありました。

 (建築家・中村義平二)

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