紙上ブログ 不動産屋の独り言 230 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 「滅多にない更新直後の値下げ」 人柄が良い人は得をする
住宅新報 2013年12月10日 号 6面
当社の管理マンションに入居している男性の更新契約をした。いつものように家主さんに更新後の家賃をどうするか問い合わせると、「今と同じ家賃で」とのこと。
相場は下落だが
周辺の賃料相場は下がっているのだが、家主さんからすれば、少しでも多くの収入を得たいものだから、値上げしないまでも今と同じ家賃で契約してくれたら有り難いもの。家賃相場には幅があって、その範囲内と思われれば家主さんの意向に添う形で更新通知を出させてもらうことになる。その男性のマンションもギリギリで相場の範囲内と思われた。元々細かなことで文句を言うような入居者ではないし。
通知を出すと直ぐ更新契約に来てくれて、何の問題もなく契約を終えた。家主さんに署名と押印をいただくため来店してもらって世間話をしていたら、家主さんが「2カ月くらい前に駐車場で顔を合わせた時、最近は仕事も減って給料も下がったので引っ越しするかどうか悩んでいる、という話が出たので心配していたんですよ」と言う。
私にはそんなふうには言っていなかったが、相当に生活が厳しくなっていたようだ。そんなことなら最初から家主さんに賃料引き下げをお願いしておけばよかった、と後悔した。
家主さんに「このままでは数カ月後に退去、なんてこともあるかも知れませんね。今は空室になると半年、1年決まらない、なんてことはザラにありますから、更新契約は済んでいますが、今からでも5000円値下げして7万5000円にしてはいかがでしょう?」とたずねると、「空いたらリフォーム代も掛かるし、何カ月かは家賃が入らないもんなあ…」としばし黙考していたが、「そうだね、下げますか」と了解してくれた。後で入居者に伝えるとすごく喜んでくれた。
損得だけではない
実は家主さんが了解してくれたのは損得だけの理由からではない。その男性は部屋をとてもキレイに使ってくれていて、家主さんにとって、そういったことは大きく影響するもの。私も、猫を飼っているその入居者に「隣町の動物病院に行く際には店の車を出しますから遠慮なく言ってね」と言い、ずっと約束を守っている。そう、人柄のいい人は得なのだ。
(坂口有吉不動産・社長)






















