昨年の東日本大震災による液状化の被害は、広範囲にわたりました。未だに傾いたままの住宅で生活を余儀なくされている被災者も、少なくありません。傾斜が1000分の6程度になると、三半規管が傾斜を感知するため、船酔いのような現象が起き、日常生活は困難です。
液状化による不同沈下を修正するには、住宅をジャッキで持ち上げ、傾斜を修正するしかありません。問題は、ジャッキアップの後に何らかの構造物を入れる必要があり、この工事に多大な費用が発生することです。
効果的だが費用も高い
修正の工法には耐圧版工法、ポイントジャッキ工法、薬剤注入工法、アンダーピニング工法などがあり、それらを不同沈下の量と傾斜の型によって使い分けます。傾斜の型とは、単純に一方向に傾いているのか、敷地の地盤がV字型に折れているのか、の違いです。前者を一体傾斜、後者を変形傾斜と呼びますが、変形傾斜の場合は建物にも歪みが生じているため、修復工事は高額になります。
耐圧版工法は支持地盤が比較的浅い場合に使われます。基礎の下を部分的に順次掘削し、油圧ジャッキを入れて順送りに基礎を補強する工法です。ポイントジャッキ工法は、比較的軽微な傾斜に使われる工法で、基礎の一部を欠き取って爪付きのジャッキを挿入し、補正材を基礎上部に入れて傾斜を修正します。どちらの工法も、再液状化に対しては強くありません。
薬剤注入工法はジャッキアップの必要はなく、基礎の下と支持地盤の間に膨張性の薬剤を注入し、傾斜を補正する工法です。再液状化への耐性はありますが、補正量は薬剤の注入量に依存するため調節が難しく、1年ほどの経過観察が必要になります。
アンダーピニング工法は、基礎の下にトンネルを掘削し鋼管を支持地盤まで挿入して安定化させ、後に鋼管の上にジャッキを据えてリフトアップさせ、傾斜を補正します。再液状化への耐性も高く、現状の工法の中では最も効果的ですが、重機などが使えず、すべて手作業で狭いトンネルを掘るため、費用も高額になります。
具体的な費用の目安として、30坪、総二階の木造住宅を例に取ると、耐圧版工法が750万~1000万円、ポイントジャッキ工法が300万~450万円、薬剤注入工法が450万~900万円、アンダーピニング工法が900万~1500万円程度必要です。また、基礎は補正されても、建物に発生した亀裂や歪みを修繕するには、更に予算が必要になります。
個人負担には限界も
住宅ローンの支払いに加え、これらの費用を個人が負担するのは大変なことです。行政の補助金もありますが、到底、補正費用をまかなえるような金額ではありません。個人財産への補助という難しい問題もありますが、健全な住まいは国民生活の基本的要件であることを考え、超低金利の液状化修繕ローンなどの設定が望まれます。
(建築家・中村 義平二)























