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スタンダード会員限定日本の中古流通 未来像 価格評価編(2) 鑑定とインスペクションの協業 建物価値を反映へ

住宅新報 2012年7月10日 号 4面

管理(賃貸・分譲)

 「瑕疵の有無などを、精緻(ち)に価格評価に反映していくことが重要」||。不動産流通市場活性化フォーラムの提言に登場する、中古価格に対する『適正評価』の必要性。評価主体の候補としてまず挙げられるのが、不動産鑑定業だ。

 米国の中古流通体系には、アプレイザー(鑑定士)による評価が制度的に組み込まれている。フォーラムの委員であり、カリフォルニア州における流通事情を視察した経験もある青山リアルティー・アドバイザーズ(東京都港区)の服部毅・取締役副社長は、「(鑑定士として)役割をぜひ担っていきたい」と意気込む。また、日本不動産鑑定協会が組織した「不動産鑑定業将来ビジョン研究会」は11年6月にまとめた報告書で、「業務拡大が期待される分野」として「住宅に関する業務」を提示。業界団体も動き始めている。

 ただし仲介取引の現場とは、温度差がある感も否めない。鑑定評価の導入について仲介業者からは、「ぴんとこない」といった声が聞かれる。服部氏も、「今の時点で需要が顕在化しているわけではない」と話す。

「土地中心」から転換 〝民需拡大〟の布石に

 需要の萌芽に先立つ受け皿整備の背景にあるのが、〝民需拡大〟という鑑定業界の一大テーマだ。公共工事の縮小に伴い公的需要が先細りつつある中で、個人住宅を含む民間需要を事業領域に加えたい意図がある。鑑定評価基準の見直しを念頭に3月、国土交通省に設置された「国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評価部会」でも、この点は共通認識。その論点も、「土地・建物の一体評価」と明確だ。地価高騰への対策として鑑定評価制度が創設された経緯が示す通り、これまで土地評価が中心だった業態の在り方を、見直す方針を打ち出している。

 しかしその裏を返せば、中古の適正評価に不可欠な「建物価値」の判定能力が、現時点では十分でないとみることもできる。そこで持ち上がっているのが、インスペクション(建物診断)事業者との連携。フォーラム提言でも例示されている。「劣化状態を調べ、この先何年ほど住み続けられるかといったことをアドバイスするのがインスペクション。その結果は特に、建物の減価額を算定する際に有効ではないか」と服部氏。更に評価の精緻化だけでなく、鑑定評価時の調査と重複する部分を一本化すれば、省力化、ひいてはトータルコストの削減につながるとの見方を示す。米国では購入前のインスペクションが普及しているが、服部氏によると、両者の協業は少なくとも一般的ではない模様。そこは〝日本流〟にアレンジし、市場への定着を図る構想である。

 服部氏は現在、さくら事務所(東京都中央区)を始めインスペクションを手掛ける事業者に働きかけている段階。具体的な動きはまだないものの、同社の長嶋修代表取締役社長とは、前向きに話を進める方向で一致している。

履歴・検済なし物件 査定資料に「有効」

 この取り組みが、市場に受け入れられる余地はどの程度あるのか。

 新築時の設計図書やリフォームの記録などを保管し、維持管理や資産価値の保全に役立てる『住宅履歴』。これら履歴付き物件は中古市場にも流通し始めており、地場の仲介業者によると、付加価値が高いという。一方で履歴のない物件は、建物価値の査定への反映が難しいということだ。

 城東エリアのある仲介業者は、「履歴どころか検査済証のない建売住宅が多く、査定のしようがない」と嘆く。工事完了検査及び検査済証の取得は義務だが、「過去に完了検査を受けていない物件は少なからずある」(国交省建築指導課)のが実態だ。では、そうした情報の乏しい物件の査定資料として、『鑑定評価+インスペクション』は有効か。尋ねた事業者全員から、「有効」との答えが返ってきた。

 ただし、そのうちの1人は「何らかの方法で、評価に対する責任の所在を明確に」と条件を付ける。見逃した瑕疵などが後に発見された場合の保証がなければ、利用はできないという。

 現状では、インスペクションの内容は事業者により様々。フォーラムでは一定の基準を作る必要性が指摘され、提言にも盛り込まれた。今後ルール整備が進めば、鑑定評価との連動にもプラスに働きそうだ。

 明確化が望ましい点はほかにもある。そもそも流通のどのタイミングで取り入れ、誰が費用負担者になるか、という仕組みの根幹にかかわる部分だ。     (鹿島香子)

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