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スタンダード会員限定日本の中古流通 未来像 価格評価編1 価格査定は〝腕の見せどころ〟 「主観」の根拠を明示

住宅新報 2012年7月3日 号 4面

管理(賃貸・分譲)
価格評価編1

価格評価編1

 11年10月より国土交通省で計7回開催された、『不動産流通市場活性化フォーラム』。流通にかかわる各分野の識者・実務者が集結し、中古市場の文字通り活性化に向けた方策について議論してきた。各回では中古流通の先進国である欧米のシステムを参考にした意見が目立ち、このほどまとまった提言にもそれが反映されている。これらは国交省での審議を経て政策に反映されていくことになるが、日本特有の国民性や文化を土台としたうえで他国の優れた要素を取り入れ、流通体系の発展を図る方向性に期待したい。この視点から、フォーラム提言を基に、日本ならではの未来像を考える。       (鹿島香子)

 「価格査定の透明性が不十分」||。フォーラムで指摘された、現在の市場における課題の1つだ。

 住宅購入者の大半が住宅ローンを利用する現状、それが本来有する価値に見合った価格で中古住宅を流通させるには、金融機関による担保評価も含めて評価体系を一体的に見直す必要がある。仲介業者の価格査定はその一部であるため、それだけを取り上げても根本的な解決策は見出せない。ただ、売主からの媒介受託の契機となる価格査定は、言わば流通のスタート地点。市場活性化に当たり、それが担う役割は大きい。

 冒頭の課題に対して提言では、『成約価格情報の整備・開示の検討』が示された。一般消費者が価格の妥当性に疑問を抱くとすれば、その根底には、周辺事例の成約価格に関する情報の少なさゆえに、『そもそも相場が分からない』ということがあると考えられるためだ。ではこの先、情報開示が進むと仮定すると、一定の相場観を身に着けた消費者に対し、仲介業者はどのようなスタンスで査定に臨めばいいのか。

「大体このくらい」 通用しない時代に

 複数の仲介業者にヒアリングすると、土地やマンションに関しては取引事例比較法が定着しているようだ。一方で個別性の高い戸建て住宅は査定手法が確立されておらず、事業者ごとに様々であるのが実態とみられる。

 東京・足立区で総合不動産業を営む北澤商事。同社では、市販のシミュレーションソフトを査定に活用しているという。物件に関する項目を入力していくと、詳細情報も含めた査定結果がカラー刷りで6枚ほど出力される。

 「最近は、インターネットで下調べしたうえで来店する人も多い。『大体このくらい』という感覚に頼ったやり方は、もはや通用しない」と安藤晃・取締役本店長。ソフトを使うメリットについて、「(従来通りの査定と)仮に額が同じだとしても、説得力が違う」と話す。

 一方、商圏を同じくする別の事業者からは、「(査定は)感覚に頼っている」「価格の妥当性を不安視している印象は、(消費者から)受けたことがない」といった声が聞かれた。

 こうした取り組みの差は、会社規模や顧客属性だけでなく、時流の変化に対する感度の違いに起因するとみていいだろう。ただし、当事者である仲介業者が皆、〝感覚〟という言葉を否定的なニュアンスでとらえているわけではない。

 まさひろ商事不動産(東京都足立区)の志賀裕一主任は、言葉を〝主観〟に置き換えたうえで、「主観をきちんと説明できてこそ一流だと思う」と話す。

 もちろん、査定に当たってデータは不可欠。ただ、例えば「路線価は1本の道路の北側も南側も同じと評価するが、実際には南側の物件の方が人気。データに頼り過ぎると、かえって的外れな額になりかねない」(志賀氏)。そこで、主観によって調整するというわけだ。

 志賀氏の場合、まず物件を現地で確認し需要者のイメージをつかむ。年収の予測値から逆算して、公示地価や路線価、周辺事例などを参考にしつつ大まかな価格を算出。そのうえで主観を基に、細かい要素を加味していく。角地などのプラス要素もあれば、反対に「隣の建物が極端に老朽化している場合、景観面でマイナス評価する」こともあるという。

 これらの根拠はすべて、重要事項説明の備考欄に記入し対面で説明する。売主の希望額と見合わず媒介受託を取れないこともあるが、目的はあくまで『査定した額での売却』。そのため、査定は仲介業務の中でも腕の見せ所だと考えている。

売主の協力不可欠 「公的・統一的な開示書を」

 一方、査定の精度をより高めようとするなら、仲介業者の独力では限界がある。まず、物件の所有者である売主の協力が不可欠だ。

 仲介業者が依頼し、売主が知り得る事実について売主自身の責任で作成してもらう『告知書』。現時点で義務化はされていないが、生活者の実感に基づく貴重な物件資料だ。しかし、特に不具合などに関して売主が情報を開示するインセンティブを見出しにくく、普及状況はいまひとつ。特に中小業者の間では、定着しているとは言い難いのが現状だ。この点はフォーラムでも議題に上り、提言には『媒介受託前の情報収集期間における、公的で統一的な開示書(ここでは告知書と同義)の作成』が盛り込まれている。

 更に『建物価値』に焦点を絞ると、〝専門家との連携〟が浮かび上がる。名乗りを上げるのが、インスペクション事業者、不動産鑑定業者だ。

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