先ごろ供用が開始された東京湾の「東京ゲートブリッジ」は別名「恐竜橋」と呼ばれ、その特異なデザインが親しまれています。名前の由来は、片持ちの構造体が左右から恐竜の横顔のようにせり出し、中央部で接続されている様子から発想されたのだと思います。 このような土木的なスケールの鉄骨構造では、基本的に「トラス構造」(以下、トラス)が用いられます。恐竜橋も、道路を挟む左右の骨組みにトラス構造が使われています。
トラスの基本形は三角形です。計算上、三角形の各頂点は「節点」と言い、フリージョイント(ピン接合)として取り扱われます。三角形を構成する軸材には曲げモーメントやせん断力が発生せず、純粋に圧縮力と引張力のみを伝えます。例えば三角形の1つの頂点に10の力が加えられた場合、隣接する2つの軸にはおよそ6の引張力が加わり、頂点に対面する軸には3の圧縮力が加わるだけです。
マッチ棒をイメージすると分かりやすいのですが、一般的に軸材はへし折るような曲げる力には弱く、引張りや圧縮には強いという特性があります。従って、軸力だけが伝わるトラスは小さな質量で強い構造を作ることができます。
トラスには平面トラスと立体トラスがあります。橋梁のように、中を列車や車が通過する場合には平面トラスが用いられ、工場建屋の屋根のように柱のない広い空間が必要な場合には、立体トラスが用いられます。鉄骨トラスの場合は、熱による変形量が非常に大きくなるため、立体トラスなどでは、変形の逃し方や節点のディテールに特別な工夫が必要です。
木造の洋風屋根に
最も身近なトラス構造は、木造住宅の屋根に見られます。木造屋根の構造には和小屋と洋小屋があります。和小屋は水平材と垂直材で構成されていますが、洋小屋は「方杖(ほうづえ)」という斜め材が入ったトラス構成になっています。同じ強度を得るには和小屋に比べ、洋小屋の方が少ない部材の量で済みます。
屋根トラスには、「キングポスト」「クイーンポスト」「フラット」などがあります。キングポストは屋根の構造をシンプルにして構造コストを下げることができ、クイーンポストは、屋根裏部屋などの空間を確保しながら強度を得たい場合に用います。フラットは工場の折板陸屋根など内部空間を大きく確保したり、ダクトなどを設けたりする場合に使われます。
筋交、ブレースも仲間
筋交(すじかい)も一種のトラス構造で、壁体内部の要所に三角形を構成して構造体を補強します。また、木構造で「火打」と呼ばれる梁などを三角形でつなぐ材もトラスの一種です。
鉄骨構造では筋交は「ブレース」と呼ばれ、木造と同じく壁体内部や床下、小屋組などに盛んに利用されます。鉄骨構造はブレース=トラスがあってこそ、成り立つ構造とも言えます。
(建築家・中村 義平二)























