知って得する建物の豆知識(77) 山里曲輪 戦国時代の名残り
住宅新報 2012年1月3日 号 4面
連載: 知って得する建物の豆知識
チョット変わったタイトルですが「やまざとくるわ」と読みます。曲輪は「郭」とも書き、城郭の一部を成す空間です。石垣などで囲った一定の平地を指します。
城郭の内部は、小さな区画に分割されています。ある区画が敵に攻め落とされても、残った区画にこもり戦闘を継続するためで、この区画を「曲輪(くるわ)」と呼びました。近世城郭では曲輪を「丸」の呼称で呼ぶのが通例で、一の丸、二の丸などがその例です。
平和訪れ目的変わる
戦国動乱が収束し、城郭が城主の居住の場として発展すると、庭園・池・茶室などを建て風雅を愛でるための曲輪がつくられました。これが山里曲輪です。日本三名園として知られる岡山城の「後楽園」、金沢城の「兼六園」、水戸城の「偕楽園」のいずれもが、山里曲輪の好例とされています。なお、色っぽい方の「廓」(金沢や浅草など遊女が集う地域)は、城外の塀などで囲って隔離した一定地域を指し、文字が異なります。
山里曲輪のような和風庭園は、時代によってその作庭観が異なります。鎌倉時代から平安時代にかけては、仏教思想に基づき極楽浄土を庭園に写し込んだ「浄土庭園」が基本でした。中国の神仙思想に基づく不老不死の世界(蓬莱思想)を表現する蓬莱石組・鶴亀石組などに特徴があります。代表例は、先ごろ世界遺産に登録された「毛越寺庭園」などです。
水も花もない庭園
室町時代になると書院造りのような簡素なスタイルや、禅宗の影響から導き出された「枯山水」が主流になります。枯山水は従来から庭園の一部としては存在したのですが、禅宗の影響が強く反映されるようになると、大規模な独立した庭園として存在するようになったのです。龍安寺の石庭(方丈庭園)や大徳寺大仙院庭園などが代表です。
枯山水とはその名の通り、庭園には不可欠の水や植物を排した抽象的とも言える庭園で、世界でも類を見ない作庭様式です。他の庭園形式と決定的に異なるのは、中を回遊するような要素は一切なく、庭に対峙して想いを巡らせる、精神の場であるという点です。
江戸時代には地泉回遊式庭園が流行ります。池泉とは池のことで、池を中心としてそれを巡るように路地が造られ、そこをゆっくりと歩くことで映画を観るように、風景が変化していくさまを楽しむ庭園です。
回遊式庭園にはテーマがあり、各地の名勝や仏教の説話などに基づいて岩石、小島、橋、洞窟などを設けています。有名なものとしては桂離宮庭園、鹿苑寺(金閣寺)庭園、慈照寺庭園などがあります。ヨーロッパの宮殿や貴族の邸宅にある風景式庭園とは全く異なる、日本独特の作庭様式が池泉式回遊庭園です。
(建築家・中村 義平二)






















