顧客が住宅ローンの審査に入る前に何らかのアドバイスはした方が良い。その方が不動産取引のプロらしく、信頼を得られやすいからだ。結果、皆さんと顧客が不動産の引き渡しまでスムーズに事を進める端緒になるだろう。中にはネット情報で十分という顧客もいるだろうが、よほど拒否されない限りは「参考までに」と伝えておいても良い。聞いて損をしたという顧客は皆無だ。多少なりとも喜んでいただけるに違いない。
アドバイスの内容は大きく次の5点が考えられる。(1)変動や固定金利の動向、(2)金融機関の選定、(3)総返済額、(4)商品概要、(5)手続きや入力のサポートなどである。他の内容もあるが、この5点を押さえておけばまずは十分だ。
(1)変動や固定金利の動向は今もっとも旬な話なので、顧客からアドバイスを求められることが多い。政策金利や短期プライムレート、10年国債など変動、固定金利の指標を押さえておき、自分なりの理解で構わないので今後どのような動きになるのか傾向を含めてアドバイスできるようにしておきたい。
顧客から「どこの金融機関が良いですか」と聞かれる機会も多いと思う。顧客とその属性に合った金融機関を紹介できるように、(2)金融機関の選定は事前にしておこう。ネット銀行や都市銀行、地方銀行が紹介の中心になるが、自営業者や個人事業主は信用金庫やフラット35を紹介する機会も多いので、常に幅広く情報は集めておきたい。
顧客は金利だけに目が行きやすいが事務手数料や保証料を加味するとそこまで他の金融機関と差がない、もしくは逆に高いということがある。そういった時はローンの(3)総返済額を計算し比較して上げると顧客も分かりやすいだろう。繰り上げ返済が多い顧客だと金利が低いよりも融資事務手数料が安い方が良い場合もある。有効なアドバイスになる。
住宅ローンの(4)商品概要の説明はできればしておきたい。特に変動金利の上昇が懸念される現在では、「5年ルール」や「125%ルール」があるか、ないかでは安心感が違うだろう。各金融機関のホームページに商品概要書があるので、「検討している住宅ローンはどのような内容か」を顧客と一緒に一つひとつ確認して上げると丁寧だ。金利以外は見ていない顧客にとって「さすがプロ」と思われるかもしれない。
最後に顧客自身で住宅ローンの審査申し込みをするなら(5)手続きや入力のサポートに関するアドバイスも必要だ。入力した融資額は審査結果後に減額はできても、増額は再審査を要する、などだ。また、顧客がネットでの入力に慣れていないならつまずかないように横でサポートしても良いかもしれない。
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【プロフィール】
はたなか・おさむ 不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。




