明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第499回 集合住宅の建築様式 外観こだわり希少性高く
住宅新報 2023年9月5日 号 4面
【学生の目】
写真の建物を見たとき最初に浮かんだ言葉は、「要塞」だった。一見、大きな一軒家かと思ったが、よく見ると5世帯が入居する集合住宅だ。レンガ造りを連想させる炻器質タイルの外壁と円形の柱や壁が重厚である。円柱は構造的に必要な本数よりはるかに多く配置されている。ギリシャの神殿のイメージがあり、アプローチにリズム感をもたらしている。高く、引きこまれるようエントランス空間の先で、鋳物の造形がヨーロッパ風の鉄扉が迎えてくれる。まるでお城である。無釉で凹凸があるハツリ面の炻器質タイルには黒い汚れが付着するが、それが古城を連想させ、ビンテージものの印象を強めるから不思議だ。
各住戸には暖炉もあるという、都内一等地に立つ高級マンションだ。集合住宅の造形としては個性的すぎるのではないかと感じたが、バブル期後半という建設時期を調べて納得した。
今の日本でこのようなマンションを建てようと思う人はいないのではないかと考える。豪華な仕上げや内装にこだわるならば一軒家を建てるだろうし、集合住宅ならばシンプルな外観で維持管理がしやすく、耐震性、機能性を重視するだろう。集合住宅の外観にこれほどまでこだわりを持ち、贅沢に造ることができた時代をうらやましいと思った。
住宅に限らず、都心なら専門店のように一つの層に狙いを定め、何かに特化したほうが顧客はつきやすいと考える。しかし、建物は仕上げ材やディテールにこだわり、装飾を多くして特徴を出そうとすると、一品生産ゆえにコストが急増する。売り出し価格や事後の維持管理の適正を考えると、どうしてもシンプルになるのだろう。実際、分譲集合住宅の外観は、どれも似たり寄ったりと感じる。
写真のマンションは相応の築年数が経過しているので設備などの更新が必要かもしれないが、新築で目にすることがない歴史が産んだ遺産であり、希少性の高い資産である。造形の良さだけでなく、装飾的な要素の多い特徴的な建物を求めるならバブル期の建物を探すとよいかもしれない。手に入れたらインフィルを現在風にアレンジして大切に使い続けてほしいものだ。もしも誰もが際限なくお金を投じて住宅を建てられるとしたら、どんな家を建てるだろう? このマンションのように、もっと個性豊かな住宅が立ち並ぶのではないか? そんなことを考えさせられた。
【教員のコメント】
土地建物別不動産制の日本で分譲マンションは例外的に両者一体制で英米法に近い。開発したスケルトンは土地と一体化したものとして半永久的に使い、インフィルを改修して時代に即応する。その過程で熟成する外観と外構が資産価値を高める。
























