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酒場遺産 ▶13 東京・南砂 「山城屋」 骨太の老舗に抱かれて

 土曜の夕刻、古い友人を誘い、神田駅前からバスに乗り江東区南砂の山城屋へ。どの駅からも徒歩20分ほど、この辺りでは珍しい「陸の孤島」だ。飲食店もまばらな清洲橋通り沿い、「北砂一丁目」でバスを降りると「大衆酒場山城屋」という大きな暖簾と看板がドンと構える。明治から100年以上続く、1897年創業の大衆酒場だ。こんな地の利の悪さだが、いつも地元の人達で一杯だ。ちなみにここから比較的近いメトロ半蔵門線住吉駅近くにも「山城屋酒場」があるが、直接の関係はないらしい。

 のれんをくぐり入ると、右手に厨房前のカウンター席、手前にはテーブル席があり、奥には6畳程の座敷がある。この日は偶然にも知人らが酒を酌み交わすところへ合流した。しめ鯖、サーモン、蛍烏賊の一夜干、豚キムチ、湯豆腐を頼むがどれも美味い。壁一面に貼られたメニューは豊富だ。瓶ビール大580円、生ビール520円、ホッピー430円、酎ハイ類は350ー400円。酒(正一合)は高清水390円、吉乃川390円、桃川北の蔵人300円、国盛濁り490円、八海山520円など。定番は煮込み、ニラ玉、わかめ刺身340円。魚も豊富で、鮪ブツ・鰯刺し・しま鰺刺し・鰤刺し・赤貝ひも・あん肝・シラスおろしなど数々の品揃え、値段は500円前後と安く美味い。

 この店に来る度、こんな骨太の酒場がいまだに東京にある幸せを実感する。店の切り盛りをする女将ハルちゃん(みんなそう呼んでいる)は、混み合っていても客の様子に合わせてサッと注文を通す。絶妙のリズム感。老舗酒場の懐に抱かれた日常の贅沢がそこにある。下町酒場の醍醐味魅だ。            (似内志朗)