11年の新設住宅着工戸数は83万戸。00年の120万戸から3割減。その前の10年間も3割減だ。この趨勢が続けば20年頃には56万戸になる。市場が縮小していくのだから、生き残るためには自社の個性、存在意義を示すしかない。
▼しかし、日本は個人も企業も、国家でさえアイデンティティーが希薄だ。社会の閉そく感が強まっているのは、日本という国も、国家としての顔を持ち得ていないからである。その要因の一端は、いまだにスクラップ&ビルドを続けていることにある。建物は「歴史の生きた教科書」だから、建物を保存する意欲がなければ、自国の歴史に愛着や誇りの持ちようがない。
▼小子も父親としての存在価値がないことに悩んでいる。家に帰るのがつらいから、居酒屋に寄る。その居酒屋も、経営理念のない店が多い。先日、小さな店構えの縄のれんをくぐったら、「当店はご紹介がない方はお断りしています」と宣わった。ママさん一人の店らしいから、常連が出来てしまえば、あえて見知らぬ客を入れる必要はないということか。日々、新たな出会いに夢を感じない店など、こちらからお断りだ。
▼少子高齢化が進む日本。アイデンティティーは「地域」にも必要だ。美しい家並みや景観、住民の絆、防災対策、首長のリーダーシップ。地域の世話役としての中小不動産業者の存在意義は高まるばかりだ。