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漂流するオフィス需要 都心5区賃料下落が止まらず 旺盛な投資意欲が格差生む

 オフィス仲介大手の三鬼商事が8月10日に発表した東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の空室率は7月末時点で平均6.37%(前月比0.02ポイント低下)だった。新規供給や解約の影響があったものの、わずかながら空室率が改善した。

 ただ、この半年余りは上げ下げを繰り返して方向感が定まっていない。

 三幸エステートの調査でも空室率悪化の底入れは見えない。同様に都心5区の7月末時点の空室率を見ると、4.67%と5カ月連続で上昇している。新築竣工に加えて、コロナ禍でオフィス戦略の見直しによる集約移転が影響していることなどを反映する。

 これに伴い賃料も低下傾向だ。三鬼商事の調べでは、1坪当たりの平均賃料が2万262円(前月比0.05%下落)となり、過去2年間下げ続けている。地区別に見ると、中央区を除き賃料は下げている。三幸エステートの調査では、1坪平均が2万7903円と18年以来の2万7000円台となった。同社では、条件の見直しやキャンペーンを実施する動きが継続しているという。足元の状況について、今関豊和チーフアナリストは、「渋谷区は20年のコロナ当初に解約・縮小の動きが広まったが、21年以降は需要が回復している。中央区は五輪開催による需要が解消された臨海エリアの影響が大きい。潜在空室率では、渋谷が大幅に低下して中央が大幅に上昇する対照的な動きもある」としている。

 オフィスビル市況は一進一退を繰り返しているが、東京都内のオフィスに対する投資家の投資意欲は旺盛だ。

 JLLによれば今年4~6月の投資総額は2114億円と前年比20.5%増えている。大量の新規供給を23年に控えて今後テナントの移転や拠点集約が活発になるとみられ、オフィスビル間の優勝劣敗が鮮明になりそうだ。