総合

「大言小語」 人の痛み

 災害が多い今年だが、今度はタイで大洪水が起きている。首都バンコクにまで水が流入してきており、タイ政府は最大級の警戒をしている。

 ▼現地在住の日本人によれば、タイは例年10月中旬に雨量が増加し、大なり小なりの洪水被害が出てから乾季に移行する。ところが、今年は夏頃から大雨が続いたうえ、タイ中枢を流れるチャオプラヤー川上流のダムが、昨年水不足だったため放水量を絞っていて、慌てて放水したらしい。10月18日現在、300人超の死者が出ており、バンコクにまで害が及べば大変なことになる。何とか最小限の被害で踏みとどまってほしいと願う。

 ▼当初、このような人的被害のニュースは、日本ではほとんど流れなかった。もっぱら自動車工場が冠水した、電子部品が不足し、PC関係商品が値上がりする、日本人は無事か、といった日本に関連することばかりで、現地の人々の被害は分からなかった。100万人規模の避難対象指示がされたなど、洪水が首都目前に迫ってから、ようやく現地の人の報道が増えてきた。

 ▼どうしてこんなに内向きな国になったのか。東日本大震災で多くの国から支援を受けた日本が、『自分自分』でどうするのだろう。原発事故で電力不足に陥り、タイなど外国に生産拠点を移した企業も多い。自分の都合で安全地帯に逃げようとしても、自然は逃してくれないと教えてくれているようだ。