常日頃(61) 第3部 超高齢国家と大震災 備えるべきは--(1) 今、東京が襲われたら
住宅新報 2011年4月5日 号 9面
観測史上最大の被害をもたらした東日本大震災は、日本がいかに脆弱な危機管理体制の下にあるかを露呈した。そのためか、被災地の復興は日を追うごとに長期化の様相を濃くしている。避難所生活の長期化が主に高齢者や身体障害者の健康を害し、時には命をも奪ってしまうことは阪神・淡路大震災でも証明済みだ。そして今、東京が大地震に襲われたらどうなるのか。首都圏で暮らす国民の多くがその不安をぬぐいきれない。超高齢国家と大震災。あるべき防災都市のビジョンと、住宅・不動産業界の役割を考える。
東日本大震災の被害が拡大した要因の一つは、行政組織自体が崩壊してしまったことだ。公共の助けが期待できなくなったとき、頼れるのは地域住民しかいない。
特に自分の力では避難できない要介護の高齢者や障害者を助けることができるのは、普段からその所在が分かっている、近くに住む人たちである。在宅が8-9割
日本では要介護高齢者の約8割が自宅にいる。65歳以上の高齢者全体で見ると96%は在宅である(厚労省、総務省資料)。この事実を踏まえれば、超高齢国家、日本の防災対策の第一歩が地域社会の再生とネットワークづくりであることは論を待たない。
そして今、国会で審議中の「高齢者住まい法改正案」の柱である「サービス付き高齢者向け住宅」こそがその中核を担うことが期待されている。これは厚労省が進める「地域包括ケアシステム」と連携し、在宅ケアの場となる高齢者のための住まいを小学校または中学校の学区レベルで整備していく構想だ。
従来、市街地から遠く外れた高齢者施設への転居には強い抵抗があったが、住み慣れた地域で、訪問介護など必要なサービスだけを受けながら暮らせる住まい(法律上も施設ではなく賃貸住宅)であれば、一人住まいを余儀なくされている高齢者の住み替えを促進する可能性がある。命救う地域交流
栃木県内などで高齢者専用賃貸住宅(高専賃)を数多く展開しているシルバーライフネットワーク(東京都中央区)の向井幸一社長は言う。
「特養などの施設では物足りないプライバシーと、自宅の一人住まいでは得られないコミュニティーが融合したものが高専賃だ。普通の住宅だから家族が来やすいし、今まで付き合っていた地域の人たちとの交流も維持できる」
超高齢社会の地域交流を担うサービス付き高齢者向け住宅は、これまでの高専賃と高円賃(高齢者円滑入居賃貸住宅)、高優賃(高齢者向け優良賃貸住宅)を一本化し全く新しい制度として発足する。
その新制度が成功するためのカギを、向井氏の言葉が示唆している。そこが、家族と地域住民が本当に行き来しやすい場になるかどうかだ。
特に家族が遠く離れていれば、近所の人たちとの交流だけが支えになる。だからこそ、高齢者住宅にとっては花見や夏祭りなど季節ごとに地域住民を招いて開く催し物が不可欠となる。
高齢者を一般社会から隔絶する考えは誤りだ。地域の人たちが共助の気持ちを持って、老いも若きも互いに生きる希望を分かち合うコミュニティがあれば、超高齢社会でも人々は力強く生きていくことができる。
まして、不幸にも避難所生活を強いられることになったお年寄りにとって、何よりも必要なものは生きる望みである。(本多
信博)













