大言小語 美しい「富士」を見る余裕を
住宅新報 2009年2月3日 号 1面
「富士が美しいですね」。時は夕暮れ。東京・目黒区「行人坂(ぎょうにんざか)」。JR目黒駅から1分ほど歩くと、一気に視界が広がる。茜雲に染まった冬空に、富士山のシルエットが鮮やかに浮かび上がっている。ある不動産団体の新年会会場に向かう一時。「いつも仕事でこの辺を通っているのに、こんな風景を見るのは久々。余裕が無くなっている証拠かな」。同行していた事業者の一人がつぶやいた。
▼そういえば最近、改めて富士山を眺めていなかったなと思い、休日を利用して電車を乗り継ぎ、鎌倉の海岸に出かけた。快晴。江ノ電を降り、砂浜を歩いているうちに、江ノ島の背後に雪を抱いた美しい稜線が目に飛び込んできた。TVなどでお馴染みの絶景だが、実物はやはり違う。ふと気付くと、稲村ケ崎の傾斜地に沿うように、無数のカメラマンの姿が。一眼レフを抱えた中高年の「休日カメラマン」が息を潜めながら、絶景にレンズを向けている。正直、圧倒された。
▼「いつもここに来ているのですか」。大きな機材を抱えた男性の一人に話しかけると、「そう。これが最高の生きがい」と満足げにうなずく。この風景が以前から好きでたまらず、定年を期に、数年前に東京の住まいを引き払って付近に引っ越してきたのだという。「富士を愛でながら老後を送る」。恐らく江戸の昔から、連綿と続く「心の贅沢」なのだろう。













