「家給(きゅう)し人足る」 松岡英雄 新住まいのことわざ(63)
住宅新報 2011年4月26日 号 18面
人も家もみな豊かで満足した生活を送る。世の中が平和で繁栄しているさま。
古い写真を整理していたら、不動産展示即売会の様子を撮った懐かしい写真が出てきた。不動産業界は、若い読者には想像もつかないような催しをある時期実施していた。
不動産協会と日本高層住宅協会の会員が共同で東京駅八重洲口の大丸デパートの催事場に集まり、自社が扱うマンションや建売住宅や仲介物件の販売(情報提供)を行ったのである。
75年9月に第1回を開催。1社当たり畳1枚ほどのブースだったが計100社が出店、3万件の物件が紹介され、6日間で5万4000人の来場があった。
会場には物件を探すためのセレクターという器械が持ち込まれ、お客の希望に応じた。マークシートのようなカード式のものだった。それでも、路線や部屋数、金額などの条件をつけて器械を操作すれば、該当する物件が弾き出されてきたので、結構人気があった。即売会は78年9月まで計7回開催された。
それは景気づけのために業界が一丸となったイベントだったが、家を探す人たちにも強い持家志向があったので、会場は毎回、熱気があふれていた。
今から思えば、右肩上がりの、良き時代の産物だった。
家給し人足る。そのとおりである。日本もそういう国になりかけていた。しかし、どこかで道を誤ったらしい。みんなの幸せはなかなか掴めない。
(エッセイスト)













