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スタンダード会員限定東京都 条例で診断義務化へ 耐震対策待ったなし

住宅新報 2011年4月26日 号 4面

 首都直下型地震が危惧される東京。東日本大震災が契機となり、老朽マンションでも耐震化の必要性が認識され始めた。折しも4月1日付で、特定緊急輸送道路沿いに立地する建築物の耐震化に向けた条例が施行されたばかり。対策は待ったなしだ。

 東京都から委託され、非木造建築物を対象に耐震アドバイザーを派遣する耐震総合安全機構(JASO、東京都文京区)には、震災以降問い合わせが急増している。平常時は分譲マンションを中心に月5件程度だが、この1カ月は1日平均3-4件。物件種別の内訳を見ると、築年数の古い賃貸マンションや鉄骨造アパートが多く、分譲マンションの問い合わせは総じて少ないようだ。

 しかし東京都には、81年5月以前に着工した旧耐震基準のマンションが1万1505棟立地する(東京カンテイ調べ)。同基準は震度5強の中規模地震を想定して設計されているため、マグニチュード8クラスの揺れが起きた場合に大きな被害を出す可能性が高い。実際、阪神・淡路大震災では、旧耐震マンションの14%に当たる105棟が倒壊または崩壊した(95年阪神・淡路大震災建築震災調査委員会中間報告)。倒壊→道路ふさぐ恐れも

 とりわけ早急な対策が求められるのが、都が防災基本計画で定める「緊急輸送道路」沿いの建築物だ。これらが道をふさぐ形で倒壊すると、避難や救援、物資輸送が滞る恐れがある。該当する建築物約1万2000棟のうちマンションの実数は定かでないが、東京カンテイの調べでは、環状7.8号線沿いの旧耐震マンションだけでも約1400棟に上る。

 都は同道路沿いに立地する建築物の耐震化を最優先課題として、15年度までにすべて終える目標を06年に掲げた。だが09年時点の累計実績は、耐震診断・補強設計を行ったのが39棟、改修まで終えたのは3棟にとどまる。

 分譲マンションでなかなか進まないのは、資金不足や「(改修により)美観が損なわれる」など様々な理由で、住民の合意が形成されにくいためと言われる。ただ、それ以前に、現行の「耐震改修促進法」が全国一律の規定であり、耐震化への取り組みを努力義務としている点が大きい。東京都のように緊急性の高い地域には、そぐわない側面があるということだ。所有者の費用負担ゼロ

 そこで都は独自に、「東京都における特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を制定。4月1日から施行となった。これは、主要な防災拠点を結び、かつ他県との連絡路となる幹線道路を緊急輸送道路の中から指定し、その沿道建築物に対して耐震診断を義務付けるもの。延べ床面積1万平米以下の場合、国が費用の3分の1、都が3分の2を補助し、所有者側の負担はなし。診断の義務化は民間建築物としては全国初であり、要件に照らし合わせると、ほぼすべてのマンションが対象となる見込みだ。「『負担ゼロ』は例外措置」と話す都市整備局市街地建築部の吉野敏郎・耐震化推進担当課長の言葉には、切迫した響きがある。公共性ある私有財産

 大きく前進したのは間違いないが、最終目標である耐震化実現への道のりは遠い。例えば、構造図などの図面書類が保管されていなければ、診断そのものを実施することすら難しい。JASOの三木哲副理事長は、「紛失しているケースは多く、修繕業者へ預けたまま行方不明ということもある」と話す。図面の復元は可能だが、調査費用は助成対象外だ。

 また、義務化されたのは診断という『入り口』であり、その後の判断は各マンションに委ねられる。あくまで私有財産であるマンションに、資産価値の向上につながる改修までを義務付けることはできないからだ。更に、一口に耐震化と言っても建て替えや除却など手法はいくつかあり、所有者にはそれらから選択する権利がある。

 『公共性を有する私有財産』。老朽マンションの耐震化は、その特有の性質と向き合いつつ進めていくしかない。

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