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スタンダード会員限定鑑定協会レター 平成23年地価公示 下落率縮小、個別化傾向顕著に

住宅新報 2011年4月12日 号 10面

 近年の不動産市場においては、不良債権処理やその後の不動産証券化の普及などを背景に、個々の不動産の有する収益性に着目して価格が形成されることが多くなっている。地域や立地・規模などによっても価格動向が大きく異なる個別化傾向が顕著になると共に、金融市場や実体経済の動向に敏感に反応し、短期間で価格動向が変化するようになっている。

 そして、先日発表された平成23年1月1日時点の地価公示においてもこの傾向が表れている(1月1日時点の地価であるため、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響を反映していないことに留意)。下落幅が縮小

 昨年1年間の地価動向は、全国平均でみると、住宅地△(マイナス)2.7%(前年は△4.2%)、商業地△3.8%(同△6.1%)といずれも3年連続下落したが、下落幅は縮小した。この傾向は、地方圏(住宅地=前年△3.8%今年3.6%、商業地=前年△5.3%今年△4.8%)よりも、三大都市圏(住宅地=前年△4.5%今年△1.8%、商業地=前年△7.1%今年△2.5%)で、また、商業地よりも住宅地で顕著である。

 この要因としては、住宅ローン減税・フラット35S金利優遇・贈与税非課税枠拡大などの政策効果や、マンション市況の回復・優良住宅地域での値頃感・資金調達環境の好転などによる開発用地の取得活発化が挙げられる。

 一方、地方圏においては、医療・福祉を重視したまちづくりによる自治体の政策効果や鉄道の開業・延伸による交通アクセスの向上、観光需要などの喚起による地域の活性化等により、地価の上昇・横ばいが見られた例もあるが、総じて回復基調は弱い。

 地価公示が発表になると、個別地点の価格よりは、どちらかと言えば対前年変動率の方が話題になることが多い。売り急ぎ・買い進みなど様々な個別取引における地価の変動率と、必ずしも一致するものではないことに注意する必要がある。

 また、地価公示価格について、周辺における実際の取引価格(売り希望価格や買い希望価格を含む)との開差についての批判を受けることがある。

 そもそも不動産は個別性が強く、形状・規模・方位などによって個別に価格が形成される傾向にあり、また、実際の取引価格は、取引当事者の個別事情を反映した結果である。

 一方、地価公示価格は、その地域を代表すると思われる形状・規模などの更地価格であり、また、取引事例や賃貸事例などにおける個別事情を可能な限り除外したうえで活用・判定した結果である。

 したがって、同じ地域内の土地であっても、形状・規模が異なればそもそも比較の土俵が異なることもありうることに留意する必要があり、市場の二極化・個別化の進行と共に、この傾向は拡大している。このことは、地価公示に限らず鑑定評価全般についても言えることである。多様な情報提供を

 地価公示を含めた鑑定評価制度は、公共用地の取得、課税、不動産取引、不動産担保融資、訴訟、不動産証券化など、我が国の不動産市場において一定の役割を果たしてきた。

 今後は、個人・法人を問わず、不動産に関わる機会の増加や不動産有効利活用の必要性の高まりに伴い、不動産鑑定業者・不動産鑑定士に対して、不動産に係る多様な情報サービス(不動産の鑑定評価だけでなく、不動産に係る調査、分析、助言、提案、相談等の業務)の提供を求めることが想定される。

 このような社会のニーズに的確に対応するためには、専門性と信頼性の向上と共にグローバル化への対応が必要となり、これらを通じて、鑑定評価制度は、ストック型社会及びグローバル化社会における不動産市場の基盤を支え、持続的な経済成長を実現するための社会インフラとしての役割を果たすことが可能となる。

 また、東日本大震災に対し、不動産鑑定業者・不動産鑑定士は、社会の構成員としてその専門的知識を活かし、被災地の復興などに向けて、国や地域社会との共同・連携事業、他の専門家・関連団体との連携・協力による災害無料相談会の実施や共同・連携事業の公益活動を行うことが期待される。

 (日本不動産鑑定協会主任研究員・井野好伸)

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