大言小語 希望の海
住宅新報 2011年4月12日 号 1面
原発事故の汚染水を海へ廃棄したことに不安や非難の声が上がっている。被害を最小限にとどめるという「究極の選択」を迫られたことは容易に推測されるところだが、海と共に生きてきた人々が多い被災地の心情を思えば複雑だ。
▼被害の大きかった岩手、宮城、福島3県をはじめ太平洋沿岸には数多くの漁港が存在していた。全国に13ある大型漁港のうち青森に八戸漁港、宮城には気仙沼、石巻、塩釜の3大漁港がある。いずれも有数の水揚げを誇る漁港ばかりだ。このほかにも中小規模の漁港も数多く、水産関連の一大ベルト地帯が被災地一帯には広がっていた。諸外国が水産資源をめぐって勢力を伸ばし、国際的な取り決めなども厳格な近年は、日本の水産業は一時期の力を失いつつあるのが現実だ。
▼津波の被害は甚大だったが、それでも今後も海と共に生きる決意を新たにした人々をテレビで見かける。こうした思いを知ると、東北が再び水産業で栄えることを祈りたい気持ちにかられる。世界でも類を見ない水産関連の一大集積地を復興の柱に据えて、更に高度な先端技術や海洋資源の研究・開発も包含するような地域が、これからの東北にはふさわしい。
▼津波によって失ったものも甚大だが、海からの恩恵もまた計り知れない。希望の海を守ることから復興が始まるのではないだろうか。













