よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第147回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く DTZジャパン代表取締役CEO 金子 佳喜氏
住宅新報 2011年3月15日 号 3面
海外からは「分かりにくい日本市場」
投資判断指標の充実を(田辺)
投資家は、リスクのある資産に投資するときに、リスクのない資産(たとえば国債)に投資するよりも高い利回りを要求します。リスク資産とノンリスク資産の利回りの差が、リスクプレミアム(リスクに応じた上乗せ利回り)になります。このリスクプレミアムが、例えば日本のリート(不動産投資信託)では3%以上あるのに、米国や英国では1%にも満たない状況にあります。
グローバルな投資家が、投資対象として魅力的かどうかという判断をするときに、欧米に比べて日本のリスクプレミアムをかなり高く設定しているために、「日本の不動産価格はもっと下がるべきだ」と言っている場合があるように感じます。(金子社長)
ご指摘の傾向があるかもしれません。ですが、「日本のリスクプレミアムが高いのはおかしい」と一概に言うことができない面があるのも事実です。市場の透明性(関連データの整備状況)、流動性(売りたいと思うときにすぐに売却できるかどうか)が低いというようなことが、投資家に高いリスクプレミアムを要求させているからです。
例えば、米国、英国、オーストラリアなどと比較した場合、市場の透明性や流動性といった面では、日本市場は残念ながら劣後します。もちろん、香港、シンガポール、中国などと比べれば、日本に優位性がありますが。
米国市場は規模そのものも大きいですし、セカンダリー(流通)市場も整備されています。英国もリート市場の規模はそれほど大きくはありませんが、私募(プロなどの特定の投資家が投資する市場)のセカンダリー市場が発達しています。
また、市場の成長性をGDPなどの客観的データから見ると、日本はアジアの新興国に劣後しますし、成熟国である米国、英国、オーストラリアと比較しても現段階では劣勢にあります。
英国の投資家がいつも言うのは、「日本市場は分かりにくい」ということです。何よりも、信頼すべき市場データが不足していると感じているようです。
Jリート市場では徐々にデータが整備されてきましたが、まだ、市場の一部の動きを反映しているにすぎません。大口の投資家は、株式や債券投資との比較感において不動産にも投資していますから、投資するにはそれなりの理論、説明材料が求められるのです。(田辺)
これから更にグローバル化が進むことを考えれば、日本としてもこうした課題に対応していくことが必要ですね。(金子社長)
そのためには、広い意味での市場のインフラ整備が必要だと思います。投資家に対して不動産鑑定評価書、エンジニアリングレポートなどは、プロセス・中味共にかなり整備されてきましたが、投資判断指標となる不動産投資インデックスの整備が遅れています。
また、日本のリートの運用態勢の整備はかなり進んできましたが、私募ファンドの世界では、まだガバナンス、業務プロセスなどについて改善の余地があるように感じます。
そうした市場基盤の整備と共に重要なのが、情報の発信です。市場情報はもちろんのこと、ファンドなどの投資家に対する開示情報の中味もより充実したものにしていく必要があると感じています。また、中立的な観点から、それを解釈して情報を発信するアナリストや当社のようなコンサルティング・リサーチ会社の役割も一層重要になってくるでしょう。
また、実はこれが大きなネックになっていると思うのが、言語の壁、英語力の問題です。最近、東証が英語によるJリートの情報発信を開始したのは、大変有意義なことだと思います。
(つづく)













