よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第146回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く DTZジャパン代表取締役CEO 金子 佳喜氏
住宅新報 2011年3月8日 号 3面
『HOT』なアジア、日本は足踏み
回復は斑模様(田辺)
世界経済が回復に向かい、アジアを中心にグローバルな不動産投資市場も活性化してきているようです。(金子社長)
DTZ・フェア・バリュー・インデックスの直近の調査(10年第3.四半期)によれば、アジア太平洋地域は全体として、引き続き魅力的なリターンを投資家に提示しています。ですが、金融危機からの回復が早かった分、地域による違いも生じています。
東京のオフィスは前四半期にはHOTでしたが、直近ではWARMに変わりました。適正な投資リターンを期待できると見ているのですが、今後5年間の賃料の回復ペースが足元鈍いと判断しているため、このような位置付けになったものです。
特徴的なのは、香港とシンガポールです。香港では、オフィス、リテール、インダストリアルのすべてにおいて不動産価格が大きく上昇し、COLDになりました。特にリテールは変化が顕著で、イールド(取引利回り)が2%という非常に低いレベルにまで落ち込みました。一方、シンガポールでは、すべてのセクターがHOTにとどまっています。例えばオフィスセクターでも、急速な景気回復が優良オフィスの賃料を押し上げており、良好な投資機会を提供しています。
市場の回復が早かったオーストラリアは、ここにきてシドニーのリテールがCOLDになりました。ただ、用途による違いもあり、同じシドニーであっても、インダストリアルはHOTです。
アジア太平洋地域をセクター別に見ていくと、引き続きオフィスが最も魅力的ですが、力強い輸出に支えられたインダストリアルがその次に位置しており、今やリテールよりも多くの優良な投資機会を提供しています。リテールに関しては、中国やインドでは旺盛な個人消費が期待されるものの、香港や上海のように多くの地域では、直近の不動産価格の急上昇がリターンの下げ圧力となっています。(田辺)
欧米についてはどのように見ていますか。(金子社長)
米国市場は、総じて魅力的な投資対象になってきていると見ています。これまでは、金融危機後の賃料収入下落や先行き不透明感が下押し要因となっていたのですが、景気の回復基調に加え、不動産価格調整が進み、適正なリターンを期待できるようになりました。
ちなみに、不動産価格の調整スピードが最も速かったのは、イギリス、オーストラリアです。大雑把に言うと、短期間に50%程度下落しました。ただ、90年代の不況とは異なり、供給が少なかったことから、09年の終り頃から賃料が上昇に転じたため、早い段階から回復に向かいました。
その次が、香港、シンガポールです。前述したように、香港は不動産価格が下落した後に急上昇してリターンが大きく低下しましたが、シンガポールは不動産価格の上昇以上の大幅な賃料上昇が期待できる状況です。日本のオフィスセクターは適正な利回りが期待できる状況(WARM)ですが、賃料がまだ調整局面にあり不動産価格にはまだ若干の下落の可能性があるのではないでしょうか。(つづく)













