オピニオン 定借底地の相続税を生産緑地並みに ポラスオーナーズ参事 木下 義雄
住宅新報 2011年3月1日 号 11面
土地の有効活用促す好機資産の凍結を防げ
相続税が今年4月から大幅に増税される予定だ。基礎控除の減額と最高税率のアップは納税者の底辺拡大だけでなく、大資産家にとっては大打撃となる。
相続税の節税対策の一環としては賃貸住宅の建築が一般的だが、若年世代の人口減少から一部の地域では供給過剰となっているのが現状である。
そのため、大地主の中には、市街化農地を既存生産緑地に追加して、緑地申請対象を増加させようとする動きが出てきている。しかし、これではますます資産活用の凍結を助長させ、市場経済の発展を阻害してしまう。
周知の通り、生産緑地の立地は大都市周辺の住宅市街地の一等地にある場合が多く、環境保全の役目を果たしている側面はあるが、土地の有効活用の観点からすれば、大根や人参が一本千円で売却できなければ採算が合わない。住宅立地には住宅が建つべきなのである。良質な住まいを供給
日本では、住宅は既に全世帯に行き渡っているとは言え、決してすべてが良質な居住空間を確保できているわけではない。定期借地権の活用制度ができてから約20年が経過したが、事業用定借に比べ住宅用定借の普及が遅れている。
この要因は地価が下がっていることもあるが、最大の理由は、需要に比べ良質な土地の供給が少ないことにある。
土地所有者からすれば、定借で50年以上の賃貸期間を拘束されるにもかかわらず、収益率の低い地代収入と相続税の評価減率(当初60%評価)しか得られないならば、そのままにしておくほうが換金性もあり、広大地評価減を受けられる可能性もある。既存緑地から転換も
大都市近隣に存在する生産緑地の一部を定借土地に変換するだけで、どれだけの良質で購買意欲を掻き立てる住宅が供給できるか計り知れない。定借といえども、交通事情の悪い郊外では需要はない。大都市近郊の定借住宅でこそ、需要と供給のバランスが取れる。
そこで定借土地についても相続税評価を6割ではなく、生産緑地と同様に農業投資価格(埼玉県の畑では平米790円の評価)並とする納税猶予制度を導入することを提言したい。
つまり定借の場合も、地代収入から定借投資価格を算出するわけだ。収入地代と相続評価額が連動する仕組みとする。相続が発生しても、相続人が定借を継続する場合は、評価差額分は納税猶予が適用され、定借期間が満了または解約となれば、猶予が切れる制度にする。
この制度は、既存生産緑地だけではなく、市街化農地、山林、雑種地、駐車場でも、一般定期借地権(期間50年以上)であればすべて適用可能とする。
ただし、優良宅地となる条件を満たしているなどの制約は今後議論すべきと考える。定借で活用している間の固定資産税などは、生産緑地の場合と違って、行政のインフラ維持費用負担の観点から宅地並み課税とすればよいと思う。
木下氏のプロフィール
定期借地権制度の設立当時(平成4年-5年)、元建設省(現国土交通省)経済局定借研究会に委員として参画。同制度を事業者が活用しやすい実務的制度へと改善するために奔走した実務家の一人。ポラスグループ、ポラス・オーナー倶楽部事務局長。京都市出身、昭和23年生まれ、62歳。













