「風が吹けば桶屋が儲かる」その1 松岡英雄 新住まいのことわざ(57)
住宅新報 2011年3月15日 号 12面
大風が吹けば砂ぼこりのため盲人が多くなり、盲人は三味線を習うから猫の皮の需要が増し、そのため猫が殺されるからねずみが増え、ねずみは桶をかじるので、桶屋が繁盛するというのである。
この言葉を耳にすると、なんの脈絡もなくふたつの話を思い出してしまう。風という言葉で記憶されているのかもしれない。
昭和50年代、日本が景気の良かったころ、銀座を接待に使っていた。話下手な私には接待は苦手な仕事だったが、客扱いの上手な女性がいて、随分助けてもらった。ある日、彼女がアパートを引っ越したことが話題になった。「誰か一緒に新しいお風呂に入ってくれないかしら」、なんてジョークを飛ばすからますます座が盛り上がった。
しかし、それが彼女を見た最後だった。彼女はその夜、風呂場で一酸化炭素中毒により死んだ。窓がない風呂場で、換気扇が作動していなかったという。今では考えられないような事故である。バブルがはじけ、銀座から遠ざかったのはそれから間もなくだった。
昔の日本の家屋は隙間だらけだった。換気扇など必要なかった。今の家屋は、特に、マンションは気密性に優れている。風呂上がり、私はしばしば換気扇を回さず家内に叱られている。
もうひとつの話。それは山口瞳の「居酒屋兆治」の中に出てくる話である。これも悲しい話である。詳しくは次回に。
(エッセイスト)













