大言小語 下町に吹き込まれる新たな時代の息吹き
住宅新報 2009年2月24日 号 1面
地域の歴史に思いを馳せながら散策する歴史街歩きが、昨今の健康志向にも歩調を合わせ、ますます盛んになっている。都内でも浅草や「谷・根・千」(谷中、根津、千駄木)といった人気スポットでは、週末ともなると、リュックを背負い江戸時代の古地図を手にした熟年層の姿をよく目にする。
▼しかし最近、その傾向が更に顕著となり、お気に入りの街の周辺に住み替えてしまおうという動きも出てきた。定年後、利便性の視点から郊外の持家を売却し、都心のマンションに住み替える動きは拡大しているが、更に「精神的充足」に重きを置いた流れともいえる。
▼浅草といえば、江戸期の巨匠・葛飾北斎が生涯暮らしたことでも知られる。生涯で3万点にも上る作品を残した世界的画家でありながら、また「引っ越し魔」の側面もあった。90年の生涯で移り住むこと実に93回。しかし、居住地としては決して本所界隈から離れたことは無かった。北斎にとって、浅草は傑作を生み出すイマジネーションを高める場所であったのかもしれない。
▼つくばエクスプレスの開通や東京スカイツリーの建設など、浅草周辺では急速に発展の動きが進んでいる。その一方で、歴史に培われた豊かな地域コミュニティーは健在だ。北斎が愛した下町の「粋」に新たな時代の息吹きが吹き込まれ、新たな都市の暮らしが生み出されていくことに期待したい。













