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スタンダード会員限定築30年マンションの選択--維持か、建て替えか(上)

住宅新報 2011年2月8日 号 4面

 築30年を超えるマンションが100万戸に達したと言われる中で、建て替えが成功した事例は全国で149件(10年4月1日時点、国土交通省調べ)のみ。現状を打開するため、政府の行政刷新会議では、区分所有法の決議要件緩和や、賃貸借契約を解約する際の正当事由見直しの検討を進めている。一方、08年に内閣府・法務省・国交省が築30年超のマンションを対象に行った調査結果によると、「現時点では建て替えの必要性を感じない」とする回答が約75%を占めた。建て替えか、修繕しつつ住み続けるか。多くのマンションが、選択の時を迎えている。

 (鹿島

 香子)多摩ニュータウン初の建て替え

 『未来』まで試練続く

 東京都西部、多摩ニュータウン内の諏訪2丁目住宅。公園や広場を挟み、23棟の5階建て団地が並ぶ。13年冬にはこの風景が一変し、最高14階建てのマンションが7棟建設される。新しい街に未来描く

 71年に入居が始まった同団地で建て替え構想が持ち上がったのは、今から20年以上前だ。『狭さ』が理由だったが、結局合意には至らず、その間に高齢化が進展。エレベーターがないため、4.5階の居住者の負担が特に問題となった。設備劣化の影響も出始め、07年に状況改善に向けた協議を本格化。事業協力者として東京建物(東京都中央区)を選定し、10年3月に開いた臨時総会で92%の賛成を得て、一括建て替えが可決された。最終的な選択理由について、管理組合の坂上勝理事は「建て替えならば、未来が見える」と話す。

 その『未来』像は、再建マンションの計画案から知ることができる。高齢者向け施設や保育室のほか、コミュニティカフェ、農園など世代を問わず利用できる共用施設を盛り込んだ。「多様な世代の入居者が集まるのが建て替えの特徴。その交流を促す仕掛けは外せない」と話すのは、東京建物・住宅事業第2部の長井芳行担当課長。単に建物を新築するのではなく、街づくりの発想でマンションを設計したという。

 本番は、むしろこれからだ。今春建物を解体して秋にも着工するが、仮住まいの手配や管理組合資産の処分など、工事着手までに終えなければならないことは山ほどある。従前より広い住戸を希望する場合は、増床分について金銭負担が生じるため、その工面も必要だ。坂上氏は、「気持ちの面での不安も大きい。(工事中の)2年間とは言え、特に高齢の単身者にとって慣れない場所での生活は孤独だ」と住民の心情を代弁。それでも、3000人規模の『新しい街』の完成に期待を寄せる。借家にトラブルを懸念

 一方、世間の注目度も高い。売買仲介を営む不動産会社の多摩営業所では、10年3月の決議成立以降、同団地住戸の購入相談が急増した。ただ、営業担当者は、「もし計画が白紙になったとしても、我々は責任を負えない。『あくまで予定』と伝えたうえで、依頼を引き受けている」という。

 慎重な姿勢には理由がある。建て替え全般に共通する問題として、区分所有者が住戸を賃貸している場合のトラブルが少なくないためだ。建て替え物件の大半は築年数が古く、従って家賃が相場より低く設定されていることが多い。同額帯の賃貸物件が周辺で見つかるとは限らず、特に高齢の借家人にとって、転居のリスクは高いと言える。一方で建て替え組合側は、反対する区分所有者に対して住戸の売り渡しを請求する権利を認められているが、賃借人の借家権を消滅させることはできない。退去してもらうか、再建後も住戸を引き続き賃貸するか、いずれにしても当事者同士で解決を図るのが基本。ここで借家人が要求を拒み続けた場合、事業続行が危ぶまれる可能性も出てくる。

 通常、建て替えはこうした諸問題を解決してようやく実行段階に移る。だが、ここまでたどり着くケースがそもそも少ない。一般的によく利用されるのが、現住戸より多くの戸数を確保したうえで還元住戸以外を事業者が分譲、その売却代を事業費に充当する手法。つまり、建て替え前の容積率に余裕がなければ事業として成り立たない。加えて特に郊外部では、売却が見込める駅近立地であることも条件だ。もちろん、区分所有者の5分の4以上の賛成によって、合意を形成しておくことが前提になる。

 ハードルの高さゆえになかなか進まないのが現状だが、建物の老朽化に問題を絞るなら、建て替えだけがその対策ではない。適切に修繕して長く持たせる取り組みが、官民で動き始めている。

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