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スタンダード会員限定よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第142回> 有識者に聞く 日本ヴァリュアーズ 代表取締役 磯部 裕幸氏

住宅新報 2011年2月8日 号 3面

『日本の安定性』を評価

 欧州・アジアから鑑定依頼増える(磯部氏)

 資産評価の役割を、将来的には当社も担いたいと考えています。これは、資産の時価評価を重視する「国際会計基準」(IFRS)の導入をにらんだ動きでもあります。米国だけでも、ビジネス・バリュアーの団体が3つあります。本来は、バランスシート(貸借対照表)の左側の「資産」だけでなく、右側の「負債」(借入金・債券など)や「資本」(株式など)の評価にも関与したいところですが、当社がこれまで積み上げてきた知識・経験・ノウハウを活かすには、「資産」を評価対象にするのがよいのではないかと考えています。(田辺)

 最近の不動産投資市場の動きを、どのように見ていらっしゃいますか。(磯部氏)

 昨年秋頃から、市況のボトム(底)期を脱しつつあるという感じを持つようなりました。鑑定依頼は、依然として保有資産の時価を把握するための継続評価案件が多いのですが、昨年後半から徐々に新規物件を取得するための相談が増えてきました。

 不動産価格は「その不動産が生み出す収益(キャッシュフロー)」を「キャップレート(取引利回り)」で割ることによって求められます。すなわち、収益が増え、キャップレートが低くなるほど、不動産価格は上昇します。このうちキャップレートは、優良物件については、昨年秋頃から低下してきています。低下幅は0.1-0.2%程度であり、それほど大きなものではありませんが、潮目が変わってきているといえるのではないでしょうか。

 収益(キャッシュフロー)については、賃料単価の下落が一部ではまだ続いているため、まだ多くの物件で減少基調にありますが、都心のSクラス物件などではほぼ横這いになるところも見られるようになってきました。

 整理しますと、市場全体としては、不動産価格に回復の兆しが見え始めており、そうした中で徐々にではあるものの、取引も活性化する方向に向かっているといえるでしょう。(田辺)

 用途別に見た不動産価格の動きに違いがありますか。(磯部氏)

 オフィスビルについては、まだ全体的に弱含みではあるものの、都心のプライムエリア(主要地域)に限定すれば強気の価格設定ができる状況になってきています。

 レジデンシャル(住宅)は買い希望が増えており、ある程度高めの価格を提示しないと取得できないケースが増えているようです。

 ロジスティックス(物流)は、ほとんどの物件が定期借家ですが、汎用性の高い施設になっているので、万が一解約されても案外早いうちに後継テナントが決まることが、一般に知られてきました。この結果、価格はそう悪くない水準で推移しています。

 リテール(商業)に関しては、都心型物件は良いのですが、郊外型物件はテナント確保という意味で苦戦を強いられている場合もあるので、どちらかといえば鑑定評価上も慎重に判断しています。(田辺)

 御社は磯部代表のネットワークに加え、鑑定書などで英語対応されていることもあり、外資系企業からの依頼案件も多いかと思います。外資の現在の投資スタンスをどのようにとらえていますか。(磯部氏)

 外資からの鑑定の依頼件数は、金融危機前の全盛期にはまだまだ遠く及びません。特に米国系からの依頼案件が低調です。これに対して、欧州系、香港、シンガポールなどの投資家からの依頼は、少しずつ増えてきています。

 現在、日本に関心ある投資家は、日本の安定性を評価している方達で、昔のように年間20%以上の取引利回り(IRRベース)を求めるようなところは少数です。ドイツの年金とか、シンガポールのファンドであっても、その原資が欧州の年金であるようなところが日本への投資に熱心です。

 (つづく)

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