「フラット35S」 着工後押し 「金利1%優遇」から1年経過 利用申請は前年比2.4倍に
住宅新報 2011年2月8日 号 1面
住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35S」の金利優遇幅拡大から、2月15日で1年を迎える。政府が経済対策の一環として実施した政策。同機構からの融資により増加した住宅着工数が、昨年1年間に増加した全体の数字とほぼ重なる。低迷していた住宅・不動産市場に、明るい兆しをもたらした大きな要素であることに間違いはない。
10年の新設住宅着工戸数は、前年を2万4716戸上回る81万3126戸だった。これを資金別に見た場合、民間金融機関からの融資増加分は678戸(69万58戸69万736戸)だったのに対し、住宅金融支援機構(フラット35・フラット35S)の増加分は2万1794戸(3万9897戸6万1691戸)に上った。その他の資金体系もあるが、支援機構の増加分が全体増加分とほぼ一致する。絶対数では民間の割合がまだ高いが、国土交通省では、「フラット35Sが、着工戸数の相当数引き上げに貢献したといえる」と話す。
10年は、フラット35全体の利用申請が大幅に伸びた。支援機構に寄せられた申請件数は、09年比145.1%増となる16万3994件。その中でも、フラット35Sの割合は82%(13万5125戸)で、09年の41%(2万7776戸)と比べてほぼ倍の割合となった。
結果的に、フラット35Sがフラット35全体を押し上げた格好だが、その大きな要因が、周知の通り「10年間の金利1%優遇」。これまでの「0.3%優遇」を時限的に拡充したものだ。支援機構でも、「優遇幅拡大が、消費者から大きな関心を寄せられることにつながった」と話している。「優良」のお墨付き
金利優遇以外に、販売を進める上で有利な『副産物』も生まれた。より多くの消費者から、該当するマンションが「優良な物件」と認識されるようになったことだ。フラット35Sを利用できるマンションの建築基準(優良基準)はこれまでと変わりないが、金利優遇の拡大でフラット35S自体に目が向けられ、「優良基準」という本来の制度内容が広まっているようだ。
逆に、利用できない場合、「何故なのか?」と質問されるケースも増えているという。注文系で際立つメリット
また、分譲マンションと違って、建築仕様(基準)を個人の判断で決められる注文住宅の場合、よりメリットが感じやすくなる。
中でも、もともと建築仕様が高いメーカーの場合、わずかな仕様アップでフラット35Sを利用でき、施工費アップ以上に大きなメリットがあることがダイレクトに分かる。
たとえば、最新金利(2.55%=最頻値)で見た場合、3000万円を期間35年で借りた場合の「フラット35」と「フラット35S」の総支払額は、後者の方が310万円抑えることができる。数十万円の施工費アップならば、十分過ぎるほどおつりが出る金額だ。消費者にとっては、より質の高い住宅を少ない支出で建てることができ、事業主にとっても、受注高を上乗せできるメリットが生まれる。
需要と供給の両サイドからの高い支持により、10年12月までだった当初の優遇拡充期限を、1年延長することが決まった。「優遇期間が終わり、金利がアップする11年目以降、支払えなくなる人が増えるのではないか」という心配も聞こえるが、「審査基準が厳しくなっている」(分譲会社のローン担当者)など、支援機構側も対応を心掛けているようだ。中古物件でも利用拡大
購入層の間口広げる
一方、中古での利用状況はどうか。同機構では新築と中古の内訳を明らかにしていないが、現場での話を総合すると、10年はまずまずの利用件数があったようだ。特に都市部周辺から郊外部にかけての物件で、自営業者や年収400万円未満の世帯など、民間金融機関による融資が難しい層を中心に反響が大きい。「今までローンが組めなかった若い世代に購入の間口が広がった」など評価する声が聞かれた。
また買取再販物件では、フラット35S仕様であることが物件選びの1つの基準になっている模様。ただし、新築と同様ローン審査が厳しくなった影響で、直近は勢いが沈静化している。
中古でフラット35Sを利用するには、バリアフリー性と省エネ性について定められた4つの基準のうち1つ以上を満たしたうえで、指定の検査機関または適合証明技術者が行う物件検査に合格することが求められる。
バリアフリーの基準を1つ挙げると、「浴室及び階段への手すり設置」。これに従うと、マンションでは浴室内の1カ所に手すりを付ければ良いことになる。「『室内の段差をすべて解消しなければだめか』といった質問をよく受けるが、実際は利用のハードルが低く使いやすい」(東京都板橋区の仲介業者)。中古流通促進への寄与は間違いないが、『優良住宅取得支援』とするにはやや疑問が残り、「通常のフラット35とあまり変わらず、分かりにくいので一本化してほしい」との声も現場からは聞こえてくる。













