片付けられない人のための20のこと 第5回 モノ離れは新しい巣立ち
住宅新報 2011年1月11日 号 13面
大崎深雪さん(仮名)は30代初めの内科医です。都心一等地のマンションに住む、セレブを地でいく生活です。□玄関からの動線作り
相談を受けた時、一瞬耳を疑いました。職業柄、「片づけられない症候群」と結びつかなかったのです。病人や弱い人たちに接する医師として、自身の生活に悩みはないだろうと勝手に思い込んでいました。
悩みは、「片づけられないというより、部屋のレイアウトがイメージできない」というもの。つまり、モノをどこに収納して部屋を飾るのかを想像できないというのです。
実際、部屋を拝見すると、マンションの間取りを生かしきれていないのです。季節に関係なく、衣服がハンガーに吊るしたまま無機質に並んでいます。まるで、アパレル会社の倉庫のような部屋です。ブランドのバッグや靴の箱が山積みにされ、ドラム式の洗濯・乾燥機を覗き込むと、衣類が詰まったままの状態で放置されています。
「何も、感じないのですか?」と聞く代わりに、「交通整理をしましょうね。玄関から奥の部屋までたどり着けるように……」と、まず部屋の中を歩く動線作りからはじめました。
モノを整理するだけでなく、空間をイメージするように、ご本人がこれまでの人生で頭のなかに焼きついている場面を思い出してもらいました。
「子供の頃、アニメで見た北欧の家のようなイメージが湧いてきました」
そして、シンプルでシャープな部屋が好みなのだということに初めて気づきました。
本来、教養があり育ちもいい深雪さんは、持っているモノも質のいいものばかりです。
「なぜ、片づけられなくなったのですか?」と、気分が落ち着いたところで聞きました。
「いつも親が片づけていました。炊事、洗濯すべてが親掛かりでした。旅行などに出かけるときの準備…も。過保護な親の元で甘えて育ちました」□来ている自分をイメージ
深雪さんは一人暮らしになって初めて、自分で片づけることに戸惑いました。
「片づけることは、モノから離れることです。モノ離れは、つまり親離れです」
私は、深雪さんに親離れとともに、自身の「巣立ち」を促したのです。親鳥が、温めてきた卵を突いて雛鳥に殻を割るよう知らせる行為があります。今がその、殻を割る時期だと。
深雪さんに、季節ごと、色別、素材別、用途別に衣服を仕分けるように、そしてそれを着ている自分をイメージするように話しました。イメージにそぐわないものは、誰か友人に譲るか、それも出来ないときは捨てると決めました。
「片づけって、楽しいですね」。深雪さんから、巣立ちのメールが届きました。













