よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第43回> 不動産証券化の現状と将来展望(14) 有識者に聞く 三井不動産・内藤伸浩氏(1)
住宅新報 2009年2月17日 号 6面
「有識者に聞く」シリーズの3人目は、不動産証券化の黎明期より実務のリーダーとして業界を先導し、現在も不動産投資市場・証券化市場の調査研究において活躍しておられる三井不動産S&E総合研究所の内藤伸浩上席主任研究員に話を伺うことにします。内藤氏は『アセット・ファイナンス』などの著作もあり、不動産と同様にファイナンスについての見識も豊富な方です。〔田辺〕
内藤さんは不動産証券化の黎明期からスキームの組成、ノンリコースローンによる資金調達などにかかわってこられましたが、現在の証券化市場をどのように見ていますか。〔内藤氏〕
私が初めて不動産証券化案件でノンリコースローンによる資金調達に携わったのは、もう10年以上も前のことですが、このときは金融機関と議論を重ね、契約書を1字1句詰めていくような時代でした。その後、契約書も標準化し、レンダー数も増える中で、ノンリコースローン市場は順調に拡大していきました。その様子を見て、私は「日本にもようやくノンリコースローンが根付いてきたなあ」と思っていました。しかし、サブプライム問題以降の金融機関の動きを見ると、必ずしもそうは言えないように感じます。
現段階において、不動産賃貸市場は下振れリスクが一部で顕現化してきたものの、少なくとも崩壊しているような状況にはありません。従って、理論的には不動産向けローンのリスクが増えた分だけ、貸出金利の上乗せ幅(リスクプレミアム相当)を厚くする必要はあるものの、資金を貸し付けること自体に問題がないケースも多いはずです。ところが、株価の急速な下落や世界的な信用収縮の影響を受け、金融機関の中には、リファイナンス(借り換え)にまで応じられないところもあるという話も聞こえてきます。〔田辺〕
これまで順調に発展してきたJ-REIT市場でも、REITのLTV(借入比率)が低いにもかかわらずデット(借入)のリファイナンス(借り換え)に苦労する事例が散見されます。〔内藤氏〕
J-REITは、投資法人がデット資金(借入金など)をコーポレート・ファイナンスとして調達しており、かつ利益による償還(投資法人が獲得した利益で借入金を償還すること)が実質的にできない構造(利益のほとんどを投資家への分配金に充当するため)を前提に不動産の長期安定運用を目的としているわけですから、デット資金は借り換えを前提にしたものといえます。投資法人の格付を発行体格付けではなく、証券化商品格付けとしている格付け会社もあるようですが、銀行も格付け会社もJ-REITをゴーイング・コンサーン(継続企業)としてとらえていただきたいですね。
過度なレバレッジをかけている不動産ファンドやSPCを除けば、LTV50-70%程度の案件(J-REIT、私募ファンドを含む)が多いため、「物件を売却・清算させても、ローンが回収できない可能性は低いので、リファイナンスに応じなくてもよい」と銀行が考えているとは思いませんが、少なくともJ-REITは個人も投資する上場型の投資商品であり、公器としての配慮も必要ではないでしょうか。金融機関にもJREITという投資商品の組成者の一員として、共に市場を育成するための工夫や努力をお願いしたいですね。
しかし、J-REITもデット資金の償還リスクに対して対応策を考えるべきでしょう。コミットメント・ラインの取得もその1つですが、より多角的な手段を講じておく必要があると思います。
(つづく)
◇〔ないとう・のぶひろ〕
58年愛知県生まれ。81年東京大学法学部卒業。同年三井不動産入社。91年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了(MBA)。三井不動産レッツ事業企画部、不動産証券化推進部等を経て、現職。













