田原祐子が教える-- 部下をやる気にさせる 究極のマネジメント力(10)
住宅新報 2011年1月11日 号 10面
明確なゴール設定がレベルアップを促す
共に頑張り、誘導するのが上司の役目
上司の重要な仕事の一つに、「部下に明確なゴールを示す」というものがあります。しかし実際には、この役割を自分自身であまり認識していない上司が少なくないのです。
仕事をマラソンにたとえれば、「走れ!」という命令だけでゴールが示されぬままでは、どの方向に走ってよいかが分かりません。また、タイムリミット(期限)が不明なままでは、どれぐらいのスピードを出して走ればよいかも決められません。ましてや、ゴールが不明な状態で走り続けることを強制されれば、どんなに勇敢でたくましい走者でも、先の見えぬ不安からおそらく力尽きてしまうでしょう。パワーの原動力に
一方、明確なゴールが示されれば、「あそこがゴールだ!
もうひと息、頑張ろう」など自分で自分のペースをコントロールできますし、ゴールに到達した時の達成感や喜びを連想して、その過程の苦しさも和らぐものです。
「部下が仕事をダラダラとしていて困る」などと嘆く上司の方々は、まず、部下に明確なゴールを与えているかを省みたいものです。また、上司たるもの、部下が仕事で迷い悩んでいる時は、「ゴールまで一緒に頑張ろう」と励まし、部下が間違った方向に進んでいれば、「ゴールは、そちらではないよ」と諭し、部下がゴールを見失っている時は、やさしくあかりを灯すことこそが、本来の役目なのです。
そして、無事にゴールした暁には、「よくやった」と部下の頑張りを称え、次なるゴールを提示する。これを繰り返すことで、部下は成長し、やがては自立していきます。具体的な目標を
私が研修をさせていただく場合にも、研修期間中、1カ月毎の目標を設定します。たとえば、ビジネスマナーや営業目標、あるいは前回お伝えした自分自身のUSP(強み)などを書き出して、それを今後どのように伸ばして行くかという「なりたい自分の姿」を目指し、トレーニングをしていきます。また、短期的な目標だけでなく、「半年後、一年後にはどうなっていたいか」と、将来の理想像をゴールに掲げながら、継続的にフォローアップします。すると、半年後、一年後には別人のようにレベルアップして、周りが「あの人、変わったね!」と驚くほどの変身を遂げる人も出てくるものです。そのようにイキイキとブラッシュアップしていく様を見ると、こちらまで嬉しくなってしまいます。
人間は不思議なもので、ゴールや目標を明確にすれば、それに近づこうという気持ちになるものです。ゴルフなども、単にボールを打つだけでなく、「このホールに何打で入れる」という目標があるので張り合いがあるのではないでしょうか。
このようにゴールの設定は、私たちに思わぬパワーを発揮させてくれるのです。
しかし、現実には、「上司の命令や、自分に求められることが、コロコロ変わって困る」「いったい上司が何を考えているのか、分からない」という悩みをかかえる部下も少なくありません。ゴールや目標を示さぬまま、目先の問題だけを取り上げて指図を繰り返しても、部下は右へ左へと振り回されるだけ。これでは、組織や部下は疲弊していくばかりなのです。
ゴールが見えず、棄権する走者を出さぬよう、ぜひともうまく「完走」に導きたいものです。
次回は、部下を動かすひと言、についてお話しします。
(たはら・ゆうこ=ベーシック代表取締役)













