よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第137回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く みずほ情報総研 環境・資源エネルギー部チーフコンサルタント 光成 美樹氏
住宅新報 2011年1月4日 号 3面
インセンティブで『環境配慮』を誘導
長期で回収する初期投資(田辺)
環境問題が認識されて、ビジネスへの影響も広がってきているようです。(光成氏)
不動産売買時のデューデリジェンス(物件の詳細調査)の土壌調査では、フェーズ1(地歴調査)はもちろんのこと、実際に土壌、地下水などのサンプリング調査を行うフェーズ2(土壌調査)にまで踏み込むケースも増えています。また、金融機関の担保評価も、07年の金融庁検査マニュアルで指摘されたこともあり、土壌汚染、アスベストなどの有無をスクリーニングして、存在する場合には、それが含まれる確率などに応じて担保価値を減価するようになりました。
米国では、金融機関は一定金額以上の融資の担保不動産に関しては、原則、独自にデューデリジェンスを行います。経営破綻したメーカーで環境債務が残っていたり、鉱山会社で土壌汚染対策に数千億円かかることが見込まれる場合もあるので、金融機関もこうしたチェックを欠かすことはできなくなってきているといえるでしょう。(田辺)
逆に環境債務そのものをビジネスにするケースも見られるようです。(光成氏)
米国では環境債務見合いの金額を減価し、環境債務付不動産として売買するなど、環境債務のみの売買事例もあり、これらを「狭義の環境債務移転ビジネス」と定義することもあります。
また、環境債務リスクを保険(環境賠償保険、コストキャップなど)でヘッジするケースもあります。これは「広義の環境債務移転ビジネス」に該当します。米国では不動産の売買当事者や浄化発注者が一定のリスクを定量化し、一定期間移転することで、投資家や銀行などに納得してもらえるように、不動産に環境リスク保険をかけるケースがあります。ただし、免責条項が多く、実際に保険会社が保険金を支払うまでのハードルは高い面もあります。
日本でも土壌汚染に関する保険があり、その種類についても拡充されつつあるものの、保険料も高く、その規模及び補償範囲も現時点では小規模です。特に、土壌浄化費用保険(汚染の可能性が低い場合に、予見されなかった汚染が将来発見された場合の対策費を補償、シロ保険ともいう)や超過浄化費用保険(汚染対策を実施することを前提として予期しない費用超過を補償)などについては、保険会社と信頼関係のある一定の調査・浄化会社を通じてのみ販売しているケースも多く、一般に購入可能でないものも少なくありません。
いずれにしても、企業の会計において環境リスクに関する記載が求められ、手続きの事務負担も大きいことから、早めにそうしたリスクから手離れしたいという企業のスタンスがこうしたビジネスを生み出す背景になっています。(田辺)
環境に優しい、環境に配慮した建物などは投資家から評価されていますか。(光成氏)
グリーン・ビルディングに関する認証制度は、国内ではCASBEE(国土交通省主導)がありますが、米国のLEED(米国民間団体)などの普及によって、世界的に環境に配慮した建築物が増えています。また、環境配慮建築物の方が、通常の建築物よりも収益性が高くなるという調査結果もあります。
しかし、実際には環境配慮型ビルだから高賃料でも借りるというケースは少なく、電力料金などのオペレーションコストの削減や、一定以上の格付を取得した建築物に対して、固定資産の減免や容積率のボーナスなどの政策的な支援が付与されていることが大きな要因のようです。また、環境配慮の効果は長期に亘って還元されるため、余分にかかる初期投資を補完するなど、政策的なインセンティブを付与することが重要です。
例えば、英国では環境面で瑕疵のある不動産を購入した企業は、浄化費用の150%を税務上の利益から控除(損金算入)できますし(費用の約30%の補助金と同様の実質的効果)、シンガポールではグリーンビルディングの設計料金への補助もあるなど、インセンティブが付与されています。
(つづく)













