東京・大田区 東電不動産 官民で「工場アパート」建設 事業費助成 町工場減に歯止め
住宅新報 2010年12月21日 号 4面
東京都大田区・東糀谷で、官民連携による工場アパートの建設計画が始動した。事業主は東電不動産(東京都中央区)。11年3月に着工し、12年4月の操業開始を目指す。
これまで、同区では3件の工場アパートを建設・運営しているが、民間企業と共同で事業化する事例は初の試み。事業主に対する助成制度を整え、参入障壁を下げたことで実現した。中小・零細工場の集積を進め、その減少に歯止めをかける狙いがある。不動産会社にとっても、事業の裾野を広げる新たな分野となり得るか、注目が集まる。
地上4階建て、延べ床面積9500平米の建物に、33区画分を設置する。施設全体を東電不動産が所有・運営し、一部を区が借り上げ転貸する予定。事業スキームの構築や事業主選定など、全体のコンサルティングをNPO法人密集住宅地区整備促進協議会が務めた。
ものづくり産業で発展してきた大田区だが、近年はその基盤を支える町工場が相次いで廃業。08年末時点で、ピーク時の半数以下である約4300にまで減った。リーマン・ショックの影響を考慮すると、現在は4000を下回ると見られる。
こうした状況の打開策として期待されるのが、工場アパートだ。区がこれまで建設した3件はいずれも満室稼働。設備投資費が一部助成されるうえ、賃料が相場より安く、また騒音や振動問題を気にせず24時間操業できる環境が評価されている。アパート内で取引が成立した事例も出ているという。
そこで同区では、事業化までの期間短縮や費用負担軽減を見込んで民間企業との連携を検討。既存の「大田区ものづくり工場立地助成事業」を一部改定し、アパートの事業主に対して5億円を上限に、基盤施設整備費の4分の1を補助することとした。今回の案件から適用し、事業の継続性を確保するため10年間にわたって交付する。
東電不動産は参入動機について、「公益性に資する事業特性が企業理念に合致した」と説明。「前例がなく、リスクを含めて読めない部分もあるが、事業性が確定すれば(不動産事業として)広がるのでは」と話している。『コーポラティブ工場』
コーディネート事業者を募集
一方で同区は、コーポラティブ方式で小規模集合工場を建設する計画も進めている。「コーポラティブファクトリー」立地促進事業を立ち上げ、参画する工場と、事業のコーディネートを行う不動産会社などの募集を12月初旬に開始した。
複数の物件取得者が組合を結成し、共同で目的の住宅を企画・建設、管理する同方式を、町工場に取り入れる。3-5社が100-200坪程度の土地を取得するケースを想定。工場部分の建設費を一部補助する。集積することで得られるメリットに加え、外観や共用部のデザインを自由に設計でき、住戸併設も可能になる、としている。
同区では、計画立案や各工場主の意見取りまとめなどを行うコーディネート事業者の役割を重視。1案件につき90万円を上限に、調整に要した費用を助成する方針だ。事業者登録に際してコーポラティブ住宅を手掛けた実績の有無は問わず、参画企業を幅広く募っている。
廃業する場合に不動産をどう整理するか、などあらかじめ詰めておくべき事案も多く、需要は未知数。ただ、09年に地元の町工場主を対象に実施したアンケート調査では、実現を望む声が多く寄せられた。敷地狭小のため建て替えが困難な工場が多く、また、若手経営者の間には外観に斬新なデザインを取り入れるなど価値観の変化も見られることから、同区では20-30社程度の応募を見込む。経済産業部の担当者は、「町工場の減少は区の競争力低下に直結する問題。官民、異業種が協力し、地域を挙げてものづくり企業の集積を維持したい」と語る。













