田原祐子が教える-- 部下をやる気にさせる究極のマネジメント力 (5)
住宅新報 2010年11月30日 号 9面
一方的な教育研修方法から『気付き』『自律』促すものへ
「育て方」は大きく変わっています
時代の流れとともに、部下を育てる方法も大きく変わってきています。
以前は、上司が厳しく叱って育てるという方式が主流で、部下は叱られながらも「なにくそ」と踏ん張り、そこから何かを学ぶというのがごく普通の姿でした。また、ある会社では、「うちでは、昔は灰皿がしょっちゅう飛んできていたものです」というお話をお聞きしたことがありますが、このように上司が腹を立てて部下にモノを投げつけても、部下はじっと耐えていたものです。しかし、今、上司がこうしたふるまいをしようものなら、部下は冷ややかな目で上司に愛想をつかし、少々きつい言葉を浴びせれば、「パワハラ」とも言われかねません。実力行使はもはや通用せず、相手(部下)を動かそうと思ったら、上司がキレず、冷静沈着な判断力と的確な行動力を持って、部下に対応しなくてはならないのです。
そのため、研修スタイルも昔とは変わっており、従来のように一方的に教え鍛える『トレーニング』から、その人の気付きをうながし、自律的に力を発揮させる『コーチング』へと変わってきています。『トレーニング『はTrain(汽車)が語源であり、あらかじめ線路が敷かれた上を走らせる方式。受け手側は、スピードや目的地等を変更することができません。対する『コーチング』は、Coach(馬車)が語源です。線路はなく、道さえあれば、受け手次第でどこへでも、どこまでも行くことができます。
また、コーチングでは、相手に質問しながら、その人の潜在能力や問題の解決策を自主的に引き出していきます。具体的には、例えば、部下が何かミスをした場合、「なぜこんなミスをしたのだ」と一方的に怒りをぶつけたり相手を叱る前に、「どうして失敗したのか」を部下に考えさせ、「今後どうすれば失敗しないか」を気づかせて、二度と失敗しないように上司がサポートをしていきます。また、仕事が上手くいった時には、「私(上司)はうれしいよ」と自分を主体(主語)とした『Iメッセージ』で伝えるのではなく、「君はよくやったね」と相手を主体(主語)とした、『Youメッセージ』で伝えます。すべては、相手(部下)を中心に考えて対応していきます。古い手法は通じない
実は、コーチングの研修というのは、本当のところ、部下というよりもむしろ上司のための、『忍耐力養成講座』のようなもの。実際、コーチング研修を実施すると、中には、「こんな手法は、部下を甘やかすことになるからよくない」とか、「自分たちは厳しく育てられたのに、なぜ部下にこんなふうに接しなくてはならないのか」といった怒りや不満をあらわにする上司や経営者の方も少なくありません。しかし、古いやり方では、部下は育たず会社の戦力にならないのです。
まさに、「活かすも殺すも上司次第」。部下にとっても、どんな上司のもとで働くかは死活問題です。
次回は、女性化する社会についてお話しします。
(たはら・ゆうこ=ベーシック代表取締役)













