知って得する建物の豆知識(50) IH対ガス 安全性かコストの安さか
住宅新報 2010年11月30日 号 4面
住宅の販売現場では、購入者の奥様の意見が大きな決定要因になることがあります。ご主人は資金の手当てと全体イメージまでで、そこから先は女性が主導権を持つことになります。
さて、そのような女性主導の家づくりにおいて問題になるのが、熱源を何にするかという点です。具体的にはキッチンレンジをガスにするか、電気にするかです。そこで現場担当者としては、それぞれのメリット・デメリットを踏まえ最適なアドバイスをすることで、顧客の信頼を得ることができます。コスト面はガスに軍配
まず熱源としての電気ですが、発電所で作られた電気は家庭に届くまでの送電ロスが大きく、利用できるのは40%です。一方、熱効率を見ると、ガスコンロは56%、IHは80%の高い熱効率を誇っています。
しかし、光熱費という面で見ると、IHは安い深夜電力時間帯ではなく昼間電力を使うため、平均的な4人家族の年間キッチン光熱費を比較すると、ガスは1.06万円、電気は2.20万円とほぼ倍の費用となっています。
機器を導入するイニシャルコストについても、ビルトイン3口タイプのIHは20万-40万円であるのに対し、ガスビルトイン3口タイプは11万-29万円とほぼ半額です。
IHが高く評価されている安全性については、炎がないIHが火災などに対して有利です。また、高齢者に多い「付け忘れ」への対策も、万全とは言えないまでも高い安全性を持っています。一方のガスにも種々の安全装置が組み込まれてはいますが、炎の使用が前提である以上、自ずから安全性にも限界があります。
また、清掃性についてもIHはガラスの一枚天板なので、吹きこぼれがあっても手入れは容易です。ガスもガラス天板ではありますが、コンロ部分は露出しており、ここに吹きこぼれが付着して炭化すると、手入れは容易ではありません。
ランニングコストについては、例えば米300グラムを炊く場合、IH炊飯器は4.6円掛かるのに対し、ガスコンロ上炊さんでは2.3円です。塩鮭4切れ(320グラム)を焼く場合の比較では、IHグリルが6.6円に対し、ガスグリルが3.6円です。全般的に、ガスの方がランニングコストが安いと言えます。細かいことを言えば、コストの差はCO2排出量の差にもなっています。肝心の「美味しさ」は?
調理の味については、試食してみればすぐに違いが分かりますが、遠赤外線効果の大きいガス調理が美味しく仕上がります。特に、強火が必要な中華料理やピラフでは、味にかなりの差が出てきます。しかしながら、とろ火で煮込むカレーやシチューでは温度調節の容易なIHの使い勝手が有利です。
安全性と清掃性の良さを選ぶか、イニシャル&ランニングコストの安さと調理の味を選ぶかで機器は決まってくるようです。(建築家・中村
義平二)













