阪神発リノベーション最前線(2) アートアンドクラフト 大阪市北区中之島
住宅新報 2009年2月10日 号 15面
古さと構造に魅力見出す
オフィスビルを住居に
大阪でリノベーションの老舗とされるのが、建物の企画・設計などを手掛けるアートアンドクラフト(大阪市北区、中谷ノボル代表)。10年前に個人住宅をメーンに事業を始めた。
同社では設立時から、「均質化されていない住まい」を提案している。この理念を象徴するのが、5年前から始めたオフィスビルの住居へのコンバージョン(建物の用途変更)事業だ。
04年に手掛けた「鎗(やり)屋アパートメント」は、築36年・鉄筋コンクリート造6階建てのオフィスビル1棟を、全9戸の共同住宅(店舗1区画を含む)へコンバージョンしたもの。間仕切りをなくしたほか、すべての部屋で天井高を3m確保するなど、ビルの構造を生かした開放的な間取りが特徴だ。また、エントランスにはアンティーク調のインテリアを配置。古い建物が持つ味わいを引き出す工夫をしている。
中谷氏によると、「築年数の古いビルに良さを見いだすユーザーは多い」と言う。高い天井や腰窓といったビル特有の造りに加えて、「深みのある色のタイルなどは、古い物件ならではの魅力」と話す。同物件は相場より1.4倍ほど高い賃料設定にもかかわらず、入居待ち状態になることもあると言う。底堅いニーズを実証している。
一方で、こうした借り手のニーズを供給側がとらえきれていない現状を指摘する。特に年配オーナーの間では、「空室対策=外観や設備を一新」といった発想が根付いている場合が多く、なかなか理解を得られないようだ。
コンバージョンを含めたリノベーション市場全体の見通しについては、「自然に広まると思う」(中谷氏)と楽観的な見方を示す。
「『古いものはダメ』という固定観念が定着しているのは、主に40代以上の層。若い世代には、多様な住まい方への関心が広がっている。この層が住宅購入層のメーンにシフトすれば、需要が急拡大する可能性もある」と期待を込める。
「豊かな時代こそリノベーション」と語る同氏。既存建物の活用がようやく注目され始めた現在もなお、業界の先駆者として走り続けている。













