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スタンダード会員限定「学者に二代なく、長者に三代伝わらず」 松岡英雄 新住まいのことわざ(39)

住宅新報 2010年11月2日 号 12面

 鵠沼海岸まで散歩することがある。1時間、5千歩の道のりである。江ノ島に注ぎ込む境川に沿った遊歩道は風が心地よく歩きやすいが、鵠沼の町中を歩くことも多い。鵠沼高校から湘南学園を経由するか、江ノ電の鵠沼駅から鵠沼松が岡を通り抜けて海岸に出る道順が気に入っている。

 鵠沼松が岡は古くからの高級住宅地で、豪壮な住宅が立ち並んでいる。藤沢市は今年市制70周年であるが、それ以前からあの町は開けていたようである。樹齢何十年という松の木に圧倒される。門のところにポリスボックスが残っていたりするのは、大臣を経験された方の屋敷ということだろうか。

 あれだけの屋敷を維持していくのはさぞや大変だろうと思ったりする。三代目が財産を食いつぶすとよくいわれるが、あの町には優秀な三代目が多いということであろう。

 しかし、介護の仕事に携わっている人から聞いた話では、あの町は独居の老人が多いという。息子や娘たちと一緒に暮らせないのは一体どんな事情なのだろうか。資産はあるのだから、どうにでもなるだろうに、なんだかお気の毒な気がしないでもない。屋敷が処分されて、小さな区画に分割され、建売住宅になってしまったところも目立ってきている。あるいは、荒れ放題のままになっているところもある。

 幸福の尺度は難しいが、あの町を歩くたびに、住む人たちのことを考えさせられる。

 (エッセイスト)

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