紙上ブログ 悪徳不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽 第72回 坂口有吉
住宅新報 2010年10月19日 号 5面
「法律に則って業務した結果」
有名無実の賃貸仲介料折半
宅建業法に忠実に則って契約業務をこなすとどうなるか、という悲しいお話。ある日、若いカップルから当社の管理物件に申し込みが入って審査も通り、数日して契約しに来店した。宅建業法では仲介料は貸主と借主それぞれから家賃の半月分(いわゆる折半)と定められているが、借主が了解した場合のみ、借主から1カ月分を受け取っても良い、と決められている。おかしな話だ。知らないだけ
本来、貸主は「空き部屋に客付けをしてもらいたい」と不動産屋に依頼し、客は「貸室を紹介してほしい」と不動産屋を訪ねる。立場は違えど、両方が不動産屋に仲介を依頼しているのに一方だけが仲介料を全額支払わされる、などというのは理不尽であろう。重要事項説明書の一番下には、申し訳程度に「借主は説明を受け、了解して仲介料の1カ月分を支払います」とあって、署名捺印したことで了解したとみなしているが、それは了解したのではなく「知らない」のである。
本当の意味合いは、借主に「本来は折半なのですが、貸主が仲介料を払う慣行がないもので貸主は支払ってくれません。そこで借主側に全額を請求するようになってしまいますが、了解していただけますか?」と聞いて、「ああ、いいですよ」と返答があって初めて「了解した」ことになる。私は以前からお客様にちゃんと説明するようにしていたのだが……。
冒頭のカップルが退去する際、月の半ばに「月末に退去する」と連絡してきたので、「解約予告の約定により来月の○日まで家賃が発生します」と告げると驚くようなことを言う。「仲介手数料って、本来は半分って言ってたよね。俺はそんな話は聞いてなかったって都庁に訴えるけど、いい?」説明しても
丁寧に説明をしていてもソレである。都庁に訴えられたら、私が「ちゃんと説明した」と主張したところで認められるとは思えない。なぜなら、私のような説明をしている業者などほかにいるワケがないからだ。手数料に関しては、どのみち有名無実になっていることだし、以降は馬鹿正直に説明しないことにした。法律を順守して業務した揚げ句に指導を食らったのではたまらない。
(坂口有吉不動産・社長)













