巣立つ人 (上) ハードとソフトの翼あり
住宅新報 2010年10月19日 号 1面
野村不動産出身でフィットネスクラブの経営コンサルティング会社を始めた飯田賢氏、スターツコーポレーションとエリアリンク出身でオフィス賃料保証ビジネスを始めた長尾泰治氏。両氏への取材を通じて感じたことは、不動産+α、その何かを持つことがニュービジネスの旗手になる条件ではないかということだ。また、クライアントに対する真摯な姿勢も2人は共通している。コンサルタントに
飯田賢氏(43)が、フィットネスクラブの経営コンサルティング会社、RE(アールイー)ビジネス(東京都世田谷区)を設立したのは昨年1月。企業としての日は浅いが、理念とターゲットは明確だ。
86-90年のバブル期に竣工したフィットネスクラブは突出し、全国で1000件にも上っている。築20年以上のこれら老朽化したクラブは今、再建による継続か、あるいは売却、閉鎖など抜本的経営判断を迫られている。
難しい判断を下すためには、クラブの経営状況を客観的に診断し、的確なアドバイスができる専門コンサルタントの存在が不可欠となる。
飯田氏は90年に野村不動産に入社。住宅開発業務に従事したあと、社内ベンチャーだった(株)メガロスの立ち上げに参加。15年ほど前の当時、フィットネス業界は冬の時代で、メガロスは業界では後発組だった。
ところが同社はその後急成長。ジャスダック上場も果たし業界の風雲児とまで言われた。その大躍進に貢献した1人が飯田氏で、店舗開発、企画、運営などで多くの実績を積み上げていた。
「独立したのは、ディベロッパーとしての開発実績(ハード)と、店舗運営ノウハウ(ソフト)の双方を持つ者でなければ、経営難に陥っている多くのフィットネスクラブを救うことはできないと確信したからです」(飯田氏)
例えば、クラブは建物オーナーと、通常は20年の定期借家権で契約している。事業継続のためには再契約に際して、バブル当時の高い賃料の引き下げ交渉が必須だが、適正賃料の算定にはRE社の評価機能が欠かせない。
同社は周辺マーケットの状況を調査し、事業の潜在的ポテンシャルを探って想定売上を立て、適正賃料を算出する。
飯田氏は「建物オーナーにもクラブ事業者にとっても最適な提案ができた時にやりがいを感じる」という。オーナーとテナントは大事なパートナーだが利害も対立するだけに、第三者の立場だからこそスムーズに交渉ができる。「オフィス保証」発売
賃貸住宅の家賃保証会社は多いが、オフィス賃料の保証会社となると数が限られる。住宅に比べ保証賃料の額が張ることと、与信調査の難しさが背景にある。
しかし、その分野で「ビルの空室が多い今がチャンス」と新たなビジネスに乗り出した人がいる。この10月1日から「オフィス保証」(商品名)サービスを始めたスターリンクの長尾泰治社長(49)だ。
同氏はスターツコーポレーションに10年以上勤務し、足立支店、札幌支店、千葉支店などの各支店長を歴任。
95年にスターツ退社後はエリアリンク(東証マザーズ上場)の設立に参画し、00年には同社専務に就任した。
独立は05年。翌06年に道路交通法が改正され、オートバイの駐車違反取り締まりも強化されたが、当時二輪向け駐車場の整備は遅れていた。そこに目を付けバイク専用駐車場のFC事業を展開したところ、それが千葉市主催の「ベンチャー・カップCHIBA」グランプリを受賞した。
「オフィス保証」はテナントによる賃料滞納が発生した場合、賃料の立て替え払い(最大24カ月)を行うほか、督促、法的手続きの手配・段取り、原状回復工事を保証する。ただし、ビルオーナーには保証金を最低6カ月分まで減額してもらう。
テナントのメリットは通常10カ月-12カ月の保証金の減額によってイニシャルコストが抑制できることと、ベンチャーなど信用力の弱い企業でも入居しやすくなることだ。
保証対象賃料は月額30万円以上300万円以内で大型ビルもカバーできる。保証料は賃料1カ月分。同社は今後、信販会社との提携を視野に入れており、与信調査の更なる充実を図っていく方針だ。
社名のスターリンクは出身企業2社からの造語と思ったが「仕事で出会うすべての人が『スター』であり、その人たちの交流(リンク)をお世話することで、みんなに幸福になってもらいたい」という思いを込めたのだという。
長尾氏の強味も不動産(ハード)に関する豊富な経験と、クライアントの立場になってのソリューション能力(ソフト)の高さである。不動産の専門家というだけでは新事業の立ち上げは難しい時代だ。
(本多
信博)













