「田舎暮らし」物件を仲介 引き渡し後こそ肝心 新潟県上越市の「久比岐開発」 買主と一緒に『あいさつ回り』
住宅新報 2010年10月12日 号 4面
退職期を迎えた団塊世代を中心に、広がりつつある「田舎暮らし」。物件の売買または賃貸契約を当事者間で済ませる田舎ならではの事例も散見されるが、所有者が登記を済ませていなかったり、敷地境界線があいまいだったり、と後のトラブルにつながるリスクもはらんでいる。その意味で、『プロ』が介在する余地は小さくはない。新潟県上越市の不動産会社、久比岐(くびき)開発(丸山隆志代表)の事例を基に、田舎暮らしを事業に取り込むポイントを探った。
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宅地造成から分譲、仲介、賃貸管理まで幅広く展開する同社は、7年前に田舎暮らし向け物件の売買仲介事業を本格化。所有者が亡くなったり、高齢を機に子どもの元へ身を寄せたりして空き家になった物件情報を、主に雑誌掲載を通じて発信している。仲介に当たっては登記簿を調べ、権利関係を明らかにしてトラブルの芽を摘んでおく。08年から依頼が増え始め、現在は年間12件程度を手掛ける。
件数の増減にかかわらず、以前からすべての案件で引き渡し後に行っているのが、地域へのあいさつ回り。井上哲総務部長は、「『都会の人間関係が嫌で田舎を選んだ』という話も聞くが、田舎ではむしろ人付き合いが親密」と話す。地域で長く暮らすためには、引っ越しのあいさつが基本だ。
買主と共に、まず町内会長の家へ向かう。その際の手土産は、「かしこまったものでなくて構わない」(同氏)とのこと。先日仲介したばかりの顧客は出身地の浅草にちなみ、雷おこしを持参した。喜んでもらえ、話も弾んだという。
居住後も折を見て、買主宅へ顔を出す。同社の紹介によって、仲介した顧客同士が知り合いになることも多いという。移住に際しては期待と同時に、心細さも感じるもの。それを多少なりとも解消する手助けをしている。
一方で、密なやり取りを続けていると、対応に苦慮する場面も少なくない。例えば小さな傷1つで、設備機器の交換を頻繁に要求されるケースもあるという。どこまで応じるか、の線引きは課題の1つだ。
また、顧客を『選ぶ』視点を持つことも重要。同社が携わった案件では、移住者の大半が地域行事に積極的に参加し田舎暮らしを満喫しているという。だが、初めから近所付き合いを拒む意思を明確に持っている場合などは、依頼を断ることも今後想定している。移住者と地域住民の双方が、『不幸』になりかねないからだ。
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不便な立地が多く案内に手間がかかる割に、物件価格が安いため手数料収入が見込めない。そうした理由から、田舎暮らし市場への参入に消極的な業者は少なくないとみられる。だが、地域の活性化を社是とする業者にとっては、意義のある事業になり得るだろう。













