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スタンダード会員限定よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第126回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 有限責任あずさ監査法人FMG事業部パートナー 泉 典孝氏(2)

住宅新報 2010年10月12日 号 3面

損益に影響する時価評価

 検討要す鑑定評価額との関係(田辺)

 不動産という切り口から見た場合、IFRS(国際会計基準)の導入でこれからの企業行動や不動産投資市場に影響を及ぼすものはどのようなものがありますか。(泉氏)

 影響を及ぼすと考えられる会計論点のうち、大きな影響を及ぼすと予想されるのは、(1)投資不動産の時価評価、(2)固定資産の減損会計、(3)SPCの連結の3点と見ております。

 「投資不動産の時価評価」については、そもそも何が「投資不動産」に分類されるかが問題になります。投資不動産はIFRSでは「賃貸収益若しくはキャピタルゲイン又はその両方を目的として保有する不動産」と定義されているので、原則としては賃貸オフィス、賃貸住宅などの賃貸用不動産がこの定義に該当します。ただ、自己が保有する不動産の占有者に対し付随的なサービス(ホテル運営など)を提供する場合、IFRSではその付随サービスの重要性によって投資不動産に当たるかどうかを判断することとされるなど、日本で本年3月から時価開示の対象となった「賃貸等不動産」とは、若干整理の仕方が異なる部分もあるので留意する必要があります。

 IFRSは投資不動産について、「公正価値モデル」か「原価モデル」のどちらかを会計方針として選択することを求めています。大雑把に言うならば、前者は毎期投資不動産を公正価値、すなわち時価で評価してその評価損益を当期の損益に反映する方法であり、後者はB/S(損益計算書)には取得原価で当初測定し、当初認識後の測定は、取得原価から減価償却累計額と減損処理(後述)による減損損失を調整した金額で測定される方法です。(注)後者であれば、従来の会計処理と大差ありませんが、投資不動産の時価を注記する必要があります。

 公正価値モデルの方が時価会計としては明確なようですが、この場合、投資不動産の時価評価がそのまま毎期の損益に反映されてしまうので、経営の舵取りが難しくなる恐れがあります。日本企業としても、どう対応するべきか、悩ましいところです。(田辺)

 そうなると、時価をどうやって決めるかが重要なポイントになりますね。(泉氏)

 その通りです。結論的には、時価評価の透明性の確保に加え、代替手段がないことから、実務上、基本的には不動産鑑定評価書に頼らざるを得ないように思います。IFRSは必ずしも外部の独立した鑑定評価会社による評価を求めてはいませんが、公正価値モデルでは、公正価値が直接的に企業の損益に影響を及ぼすことになるので、鑑定評価基準に基づいた評価額と公正価値との関係をどのように考えるべきか、今も検討が進められているところです。(田辺)

 「固定資産の減損会計」については、既に日本でも導入されていますが、IFRSとの違いはどういったところにあるのでしょうか。(泉氏)

 日本における固定資産の減損会計では、まず、一定の基準(時価が簿価の50%程度以上下落など)に基づいて「減損の兆候」があるか否かを判断し、兆候があれば「減損損失の認識の判定」に移ります。この段階では、不動産の経済的残存耐用年数に応じた割引前将来キャッシュフローに当該年数経過時点における回収可能価額を単純に加算した合計から簿価を差引き、マイナスとなれば減損を認識するという考え方になります。減損損失を認識すべきと判定されたら「減損損失の測定」に移ります。ここでは、不動産の簿価を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失に計上します。すなわち、「減損の兆候減損損失の認識の判定減損損失の測定」といったステップを踏んで、初めて減損処理をすることになります。

 これに対して、IFRSでは、減損の兆候のステップで、減損の可能性のある資産が識別された場合、日本基準における減損損失の認識の判定ステップがなく、一気に減損損失の測定のステップに入ります。なお、減損の兆候には量的基準もありません。こうなると、それまでは減損損失の測定に至る前に減損対象外とされていた固定資産が、減損対象とされるケースが生じる可能性があります。たとえば、時価が簿価から50%程度以上下落していなくとも、減損の兆候が識別され、一気に減損損失の測定を実施することにより、減損ありと認識されるような場合があり得ます。つまり、日本基準と比較して減損がより早期に認識される場合があり得るということです。

 (つづく)(注)説明の都合上、「公正価値」のことを「時価」で代替しています。

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