よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第38回> 不動産証券化の現状と将来展望(9) 有識者に聞く ニッセイ基礎研松村氏
住宅新報 2009年1月13日 号 5面
現在の不動産投資市場・証券化市場は金融危機の影響などを受け、厳しい状況にあります。そこで今回からは、この分野の有識者が現在と今後の市場をどのように見ているのかを連載していくことにします。1回目は、90年代から不動産投資市場の将来性を予測し、投資市場・証券化市場の発展に向けて数々の有益な提言を発してこられたニッセイ基礎研究所の松村徹上席主任研究員にお話を伺うことにします。(田辺)
不動産投資市場の現状をどのようにとらえていますか?(松村氏)
1年以上前から不動産投資市場は悪化しつつあったが、ニッセイ基礎研究所が定期的に実施している「不動産市況アンケート」(2008年10月9-24日実施)が端的に示しているように、昨年後半からその度合いが急速に強まった。アンケート回答者数も、「悪い」(69.6%)と「やや悪い」(29.4%)を合わせると99%を占めている。
現在の市況判断に当たって重要な点は次の3つだ。
1点目は、世界的な金融危機が収束しないのに、不動産投資市場だけ回復するということはあり得ないということである。従って、金融市場の底打ちがない限りは、不動産投資市場が09年中に回復するというのは考えにくい。ハードランディングが続く可能性も、残念ながら否定できない。
2点目は、資産価値の悪化が、これから一層顕現化してくるということである。現在のところ、不動産鑑定評価が実取引価格に追いついていない。金融危機の影響があまりにも急激であったために、不動産取引価格に非連続性が生じているのが原因である。しかし、次期決算でJREITの鑑定評価額が見直されることで、資産価値の下落傾向が明らかになってくるだろう。
第3点目は、低迷するJREIT市場について、抜本策を講じる必要があるということである。「年間4000億円の安定収益を生み出す不動産金融商品」というREITの本来的性質からすれば、配当利回りが10%を超えるような価格付けはおかしい。だが、REITで倒産が起きるようでは、REIT本来の商品特性が理解されない危険性すらある。したがって、デットにおける公的金融機関の活用、買取機構の利用、M&Aによる下位REITの吸収合併などの対策で、まずは倒産の連鎖を回避しなくてはならない。倒産リスクがなくなれば、下位銘柄の投資口価格ももう少し安定するだろう。(田辺)
今回の市場悪化と平成バブルの崩壊とを比べた場合、そのインパクトはどちらが大きいと思いますか。(松村氏)(金融要因を除き)実物不動産のファンダメンタルに限定すれば、今回の市況悪化によるダメージは、平成バブル崩壊の時ほど大きくはない。平成バブルの時には、東京のオフィスビルの空室率は1%まで低下し、バブル崩壊後には10%以上に跳ね上がった。それに対して、今回は市況回復時に空室率が2%台まで低下したに過ぎず、今後上昇傾向が強まるとしても前回ほど大きくないと見ている。また、平成バブル時には、東京圏のオフィス立地が東は幕張から西は厚木、海老名まで伸びたが、今回はそこまで野放図に広がらなかった。
平成バブル時との違いが生じているのは、不動産市場に関する情報の流通量に大きな差があることが一因である。バブル期の賃料は、テナントや投資家に市場情報があまりないためオーバーシュートしたが、現在は市場情報が広く流通し、それに基づいて賃料形成が行われやすくなっており、市場が極端な方向に動くリスクは相対的に低下している。
現在のような下方局面であっても、「新規賃料と既存賃料のレント・ギャップはまだ大きく、新規賃料が下がったからといって既存テナントの賃料までが大幅に下がることにはならない」ということも、投資家は理解できるようになっている。実態をきちんと理解できる中長期の投資家が、今が不動産の買い時であると判断することもあるのではないか。
(つづく)













