住宅・都市・不動産業 新成長戦略で明るい未来を築け! 紙上対談シリーズ(5)内需拡大に住宅政策をどう結びつけるか
住宅新報 2010年9月14日 号 6面
シリーズ第5回は「内需拡大に住宅政策をどう結びつけるか」。内需の柱といわれる住宅にどう火をつけていくか。ご出席は、この分野に詳しい小泉俊明・民主党衆院議員と、樋口武男・大和ハウス工業会長。需要喚起のための住宅金融のあり方から、税制などの政策対応、環境対応、更に安全・安心や豊かさの実現まで、幅広い視点から議論していただきました。経済のキーは住宅
小泉議員
日本は資源のない国ですから、国力の源泉は経済力しかないわけで、どうしても持続的な経済成長をしっかり進めていくしかありません。ここ20年の経済政策の失敗で、経済は坂道を転げ落ちてしまった。GDPは513兆円だったものが475兆円になり、今度の4-6月期データでは450兆円まで落ちました。その経済を立て直す起爆剤、推進エンジンは何かというと、住宅です。英国も米国もすべて住宅に力を入れることで、内需拡大をして、経済を引っ張ってきました。
日本も内需に大きく転換をする中で、住宅を強化することが必要です。住宅100万戸で40兆円から50兆円の経済波及効果があります。雇用も税収も増える、素材から宣伝広告費まで入れると、すそ野は最大で、自動車の数倍規模の経済波及効果の厚みと幅があります。住宅を個人消費のキーに、経済のエンジンにしていく。我が党もそうですし、私も当選以来一貫して言い続けてきております。
私は、安全安心住まいの会など住宅に関する各種議員連盟の事務局長になって進めてきました。1年前に就いたポストが国土交通委員会で、住宅政策を自らつくることができるようになりました。樋口会長にお目にかかって、改めて企業経営者の意見を政策の中にいかに生かすかが大切であることを再認識しました。経済波及効果の大きさ
樋口会長
今言われたことを、そのままぜひ推進してください。全く同感です。衣食足りて礼節を知ると言われますが、今は家庭教育もあまりできていません。衣食住の「住」が充足されて初めて、礼節を知るです。住宅の経済・雇用効果は、我々は「10万戸増えれば32万人の雇用が増える。経済直接効果は2兆5000億円。関連まで入れると4兆8000億円。国の税収はそれで4000億円増える。だから住宅に力を入れてください」と、随分言い続けてきました。ところが、80万戸時代というか、もっと少なくなった。それで日本の住宅は充足されているのかというと、数の上では足りていますが、豊かな住生活という意味では程遠いのが実態です。
また、20年経ったら家の価値はゼロだと、それもおかしいと思います。諸外国の例を見ますと、家は資産だ、社会資本だ、という観点で、欧米では消費税もゼロ税率などで軽減されています。そのように、生活の充実を優先させていくことで、皆さんと共同歩調を取れたらと思います。
また、人口が減っていく中で、住宅の将来はないのかというと、そうではない。住宅そのものを長期優良住宅に切り替えていくことが大事で、それは世界中の環境対策にもなります。
私どもは中国でマンションを造っていますが、中国では「グリーンイノベーション」が進んでおり、相当な緑地を求められます。日本も、海外のいいところは取り入れたらいい。新しい街を造っているのに、電柱が立っているのは日本だけです。無電柱化にして、住宅も街もよくならなければならないと思います。資産価値を上げるために
小泉議員
住宅の資産価値を上げていくためには、個々の住宅プラス住環境、水と緑と、日本の強みである文化の香りのする、コミュニティがある、住みたくなるような街づくりを一体として進めなければなりません。欧州は森の中に家がある感じですが、日本も街全体の資産価値を上げるような政策が必要です。
経済的な側面からでは、ここ30年間で米国や欧州の不動産価格は4倍から5倍になったのに対し、先進国の中で日本だけが20年間で実勢地価が5分の1から10分の1.になっています。これ自体が間違った政策です。継続的に緩やかに上がっていく政策を採る必要があります。法改正などを総動員して、住宅に対する考え方を転換して、全体を根本的に見直す。そうすることで経済を引っ張り、税収にもつながるのだと思います。
命を守る基本が住宅ですので、政官民が一体となって、あるべき姿をイメージして、共通認識を持って取り組んでいけたらと思います。耐震改修を急げ
樋口会長
耐震不十分住宅の話ですが、私がプレハブ建築協会の会長を務めた7年間で計5回大きな地震があり、応急仮設住宅の出動を経験しました。現地に行っていろんな方にお話を聞く中で、「耐震補強をしておけば倒れなかった」という声もありました。全国に耐震不十分の住宅が1000万戸以上ある現実。いつまで放置しておくのか、これをどうするのかです。
小泉議員
実は、鳩山内閣のとき、一般住宅の耐震診断とその補強工事をやろうと決めていました。地方の工務店の仕事にもなりますから。今後協議する経済対策などで、即効性のあるものは住宅、特に地方の工務店などに仕事をしてもらう政策で、それを進めいこうと思います。
樋口会長
それは地方の活性化にも日本の国の繁栄のためにも欠かせないことです。地方に潤いもできますし、ぜひ推し進めていただきたいと思います。エコ技術の輸出を
樋口会長
CO2の問題は避けて通れません。日本のCO2排出量は全世界の4.8%ですから、日本は世界のリーディング国として模範を示して、良い環境技術をどんどん輸出していけばいい。特に米国と中国に。それをやれば新たな仕事と雇用を創り出すことができると思います。
小泉議員
党で中東の取りまとめ役をやっていますが、サウジアラビアなどにオアシスを造る技術、これは日本でないとできない。国内で技術的にしっかりしたものを造れば、そのまま輸出できます。ジャパンブランド
樋口会長
環境技術は「真似してもらってもええやないか」と思います。世界の環境が良くなれば、地球を守れるわけですから。今、私どもが中国・蘇州で手がけているプロジェクトの評判がいい。第三者が「ジャパンブランドはいい」と。当社の現場で働いてくれている会社が、中国の大手ディベロッパーから「引っ張りだこ」です。日本の技術を学んだことで、仕事が倍になったと、お互い「ウィンウィンの関係」です。日本式の内装付きですから、それがまたいいと。設備の日本製品もブランドになっています。
小泉議員
高くても付加価値がつく。メードインジャパンというパック形の商品になったということですね。3重サッシとエコ基準
樋口会長
大連で開発しているマンションの窓は、3重サッシにしてあります。車がどんどん増える国ですから。騒音は、閉めるとまるで聞こえません。冷暖房も利き、その効果はものすごい。ですからエコ住宅になるのです。長期優良住宅、エコ住宅の基準など、規制すべきところは規制することも必要です。
「省エネ」と共に「創エネ」「蓄エネ」も必要になります。規制するものは規制して、優良住宅については認定書を出して家歴をつくって、住宅の資産価値が下がらないようにしていく。米国や中国など外国のいいところを結集して、大きな視野で、世界のレベルを上げていくべきです。住宅金融のあり方
小泉議員
住宅政策を進める上で大切なのは、実は金融です。きちんと融資をつけるシステムとして、私がずっと言い続けてきているのが、かつての長期固定、低利、直接融資の住宅金融公庫をもう一度復活させることです。今は証券化になって、銀行はある特定の職種、地方公務員と大企業勤務者だけにしか貸さない。私たち中小企業経営者と従業員は、ローンを組めないのが実情です。借り手選別がされてしまうのです。
また、ガバナンスが利かないのも問題です。例えば、国が金利を下げても、実際に下げるかどうかは銀行の自由なのです。
国が住宅政策とか街づくりを推し進めるには、まず最終購入者である個人に、長期固定、低利、直接融資のローンを確立することです。次にマンションとか建て売りの事業者に金融をつけていかないと、経済は活性化しない。
住宅減税でも、最終的に支払うのは民間で、財政は傷まない。究極の民活が住宅なのです。贈与税の非課税枠
樋口会長
住宅資金贈与税の「非課税枠1500万円」ですが、2000万円や3000万円に上げても、国の財政はそれほど傷みません。
小泉議員
景気はお金回りですから、お金持ちのお金を動かせばいい。非課税枠は5000万円でも、1億円でもいい。セカンドハウスを認めることも必要です。要は眠っているお金を次の世代のために使うことを、積極的に推し進めることです。住宅版エコポイント
樋口会長
住宅版エコポイントは非常に効果がありました。延長、プラス拡大をつけてもらいたい。
小泉議員
自動車でも1割のエコポイントが付く、300万円で30万円が付くのに、何で1500万円の住宅で30万円なのか。それなりに大きなポイントを、場合によっては10倍くらいでも、省エネの内容で加算してもいい。
住宅ローン減税でも、実際に使えない最大600万円のローン減税ではなく、利子所得控除など、使えば使うほど減税になるようなものを取り入れたいと思います。
樋口会長
そうすれば、エコ住宅の推進になります。それとリフォームにもっと力を入れてもらうことです。耐震不十分の住宅を早く改修しないと、命の問題ですから。小泉さんが言われた政策の中の2軒目の家は、不動産取得税免除でもいいのです。家を買って、テレビから何からお金を使うわけですから。そういう相乗効果が大事です。活性化推進のチャンス
小泉議員
今まではこうした経済活性化策を述べても「やれ金持ち優遇だ」と言われましたが、経済がここまで落ちると、誰も反対する人はいない。その意味では大きなチャンスです。緊急対策、何をしたらいいか、即効性のあるのは住宅です。住宅に対して金融面などからインセンティブをつけていく政策を第1に進めたいと思います。
樋口会長
衣食住の住は心の豊かさと人の生命、財産を守る重要な社会資本です。住宅と都市を経済再生の起爆剤に。私が住宅業界に身を置いているからではなく、これは基本中の基本です。住宅を是非とも経済活性化の柱にしてもらいたいと思います。小泉俊明
(こいずみ・としあき)
衆院議員、当選3回(茨城3区)。取手市議を経て、現在、民主党国対副委員長、衆院国土交通委員会筆頭理事。早大政経卒、53歳。樋口武男
(ひぐち・たけお)
住宅生産団体連合会会長、大阪商工会議所副会頭。63年大和ハウス工業入社。01年社長、04年から現職。関西学院大法卒、72歳。













