よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第120回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く ドイツ証券不動産投資銀行部RREEF日本リサーチヘッド 小夫孝一郎氏(6)
住宅新報 2010年8月31日 号 3面
安全資産から不動産投資へ
存在感高まるアジアの投資家(田辺)
今後の不動産投資市場の見通しについてお聞かせください。(小夫氏)
世界的な潮流について言えば、売買市場は徐々に正常化してくるでしょう。国債や金などの安全資産に回避していた資金の一部が、不動産投資に向かうことが予想されます。その中でアジアの投資家の存在が、これまで以上に大きな地位を占めるようになるでしょう。例えば、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF=各国政府が出資するファンド)、大型年金、中国の富裕層などの投資家です。特に中国が国内のバブル抑制策を講じた場合は、国内に投資されていた資金の一部が、海外投資に振り向けられることも予想されます。ただし、賃貸市場に関しては、景気よりも回復が遅れます。各国ごとの需給関係も異なるので、地域によって回復時期に違いが生じます。一本調子での回復とはならないでしょう。
次に日本については、既にキャップレートの上昇は止まっています。従って、売買市場は徐々に回復に向かうでしょう。これまでは、大型不動産の購入主体は主にJリートでしたが、今後は更に幅広い投資家が買いに出てくると思います。
しかし、オフィスビル賃料が上向きに転じるのは来年後半以降になりそうです。02年以降の動きを見ると、東京都心5区のオフィスビル市場では、空室率が5%を超えると賃料は低下し、空室率が5%を下回ると賃料が上昇するという明らかな関係があることが分かります。今後の賃料の動きを予想するには、空室率の推移に注目すると良いでしょう。
また最近、賃貸住宅市場の安定性が見直されるようになってきました。数年前の活況期には、賃料改定によるキャッシュフローの増加が見込めるオフィスビル投資の方が有利だという意見もありましたが、改めて賃貸住宅投資の長所に目が向けられるようになったと言えるでしょう。
同様の現象は、分譲マンション市場についても見られます。景気が悪いと住宅は売れないと言われますが、過去20年間のマンション市場を調べると、好不況よりもマンションの価格水準が、供給量や販売動向を決めていることがわかります。東京圏の新築マンション市場について言えば、平均価格が4000万円から4500万円位にまで下落すると供給戸数が増加し、販売も回復する傾向があります。景気低迷期における住宅の強さが、もっと見直されても良いように思います。(田辺)
最後に、今後、注目すべき分野などがあればご教示ください。(小夫氏)
1つは、環境問題への対応です。環境に優しいビルに、付加価値が生まれる可能性がありす。数年前にも同様のことが言われましたが、当時は事業主体もテナントも、環境に優しいからコストアップや賃料上昇につながって良いとまでは考えていませんでしたが、現在は認識が大きく変化しました。
もう1つは、国や地方公共団体が所有している資産(PRE:Public
Real
Estate)の有効活用です。国や地公体は保有資産のうち、不要不急の資産を外部へ売却するのはもちろんですが、有用な資産も民間に売却してリースに切り替える方式も検討していくべきです。国や地公体が保有する道路やインフラ設備も、民間資金をもっと大胆に導入するべきです。公的債務残高が先進国最悪の水準にある今、このような動きを加速させていく必要があると思います。













