大言小語 都心の居酒屋嘆く
住宅新報 2010年8月31日 号 1面
東京駅・八重洲口界隈では大型ビルの建て替え工事や、暫定利用のコイン駐車場が目立つ。大型ビルになるほど、解体から竣工までの期間は長い。「その間に、店をたたんでしまうところだってあるぐらいだよ」と嘆くのは、ある居酒屋チェーンの店長。勤め帰りのサラリーマンが目当てだけに、大きなビルが一瞬にして姿を消してしまったときの影響は深刻だ。「完成しても、最近はすぐにテナントが決まるってこともないみたいだしね。外人が多い会社だと、我々のようなところは関係なくなるしねえ」
▼不況時は接待用の高級飲食店は大きな打撃を受けても、同僚と飲みにいくような安酒場は安泰と思っていたのだが昨今の建て替えラッシュに、大きな危機が潜んでいた。居酒屋チェーンは概して客を『マス』としてしか捉えないが、オフィス街の裏通りには意外にも大企業のサラリーマン客、一人ひとりと顔馴染みになっている店が多い。
▼居酒屋繁盛の3大原則といえば、味よし・価格よし・愛想よしである。最後に支払う勘定のことを「オアイソ」というのも、そこからきている。ただ、この3要素を超える真髄がある。それが、通い続けた時の積み重ねからしか生まれない『馴染み』である。江戸時代、3回以上呼び呼ばれた客と遊女の間柄をそう呼んだが、店側と気が置けない関係があってこそ、居心地のいい居酒屋となる。













