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スタンダード会員限定よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第119回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く ドイツ証券不動産投資銀行部RREEF日本リサーチヘッド 小夫孝一郎氏(5)

住宅新報 2010年8月24日 号 3面

低い機関投資家の割当

 不動産投資の専門家育成が課題(田辺)

 日本の不動産投資市場は本格的にスタートしてからまだ歴史が浅いので、これまでは市場基盤の整備が1つの課題でした。(小夫氏)

 その意味では、他国との比較感においても、日本市場の整備はかなり進んできたと思います。ただ、逆説的になりますが、投資家やファンドなどのリスク管理が進んだことが合成の誤謬(ごびゅう)となって、逆に市場に悪影響を及ぼしている面もあるように感じます。

 例えば、Jリート(日本版不動産投資信託)に投資する場合、不動産投資の一環ですから、本来は中長期的な保有を前提に投資すべきですし、その投資成果も中長期的に判断すべきです。

 しかし、機関投資家は内部でロスカット・ルールを定めており、取得価格から一定幅以上(15-30%が多い)下落すると、ロスカット(損失処理)することが強制され、売却せざるを得なくなってしまいます。

 この行動は個別に見れば一見正しいように見えますが、同じようにリートの投資口(株式会社の株式に相当)の売却が他の投資家でも一斉に行われると、Jリート市場全体の相場が崩れ、各投資家は更にロスカットせざるを得ないことになるなど、負のスパイラルに入ってしまいます。これは今回のサイクルで起きた合成の誤謬の1つです。

 同様に、不動産価格の下落局面で、レンダー(資金の貸出を行う者)がリスクコントロールのために一斉に貸出を抑制すると、企業・ファンドの経営破綻が増えるため、不動産価格が更に下落し、それがまた貸出を抑制させるという悪循環に陥ってしまいます。

 特に日本では、逆張りで投資をする投資家の数が少ないように感じます。リスク回避志向が強くなり過ぎて、不動産価格の上昇局面でなければ投資しない(または融資しない)ということになると、価格の上昇局面で投資が増え、下落局面では投資が極端に減少することになり、市場の不安定さを増幅させてしまいます。(田辺)

 市場整備が進んできた割には、日本では年金をはじめとする機関投資家の資産運用における不動産へのアロケーション(割り当て)があまり増えていません。(小夫氏)

 ご指摘の通り、年金基金の資産運用に占める不動産への投資割合を見ると、ノルウェー、スイス、ベルギーでは10%を超えており、アメリカ、イギリス、ドイツなどでも5%以上になっていますが、日本は2%にも達していません。

 日本の各アセット(株式、国債、不動産)に投資した場合のリスク・リターン(03-09年)を調べると、意外にも不動産はリスクに比べてリターンの高いアセットであったことが分かります。従って、本来、日本の不動産は投資対象として魅力あるアセットであるはずです。

 それにもかかわらず機関投資家のアセットアロケーションが増えないのは、過去の不動産バブルとその崩壊の経験が抑制的に作用していることに加え、特に年金などに不動産投資の専門家がまだ少ないことが要因になっていると考えられます。

 (つづく)

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