森田博子--キッチン・収納 現場の『すご腕』 第20回 理想のキッチンづくり 素敵を味わう生活空間
住宅新報 2010年8月10日 号 9面
「素敵に暮すには、どうすればいいのかしら?」
私は、考えたことはありません。でも、「素敵って、これかしら」と感じる瞬間はあります。
食事の支度、食卓の団らんなどの日常的な風景のなかで「素敵」を見つけることは日々あります。
「素敵!を演出してくれるのは3つ間」。「第3回」で紹介しましたが、その一つは「時間」。家族や親しい人たちと食事をしたり、話したりして過ごす時間は素敵なことです。次に「空間」。生活空間は素敵を味わう舞台になります。そして最後が「人間」です。家族だけでなく地域の人たちと、素敵を共有しあう人間がいなければ、素敵な生活を楽しんでいるという実感がありません。
私にとって「3つの間」を共有する最も身近な存在である夫は、最近料理の楽しさに気づき、キッチンを乗っ取りそうな気配です。ワイングラスを片手に、次々と覚えたばかりの手料理作りにご満悦です。私は、皿を運んだり、テーブルをセットしたりとすっかり脇役に徹するようになってしまいました。素敵な食卓を演じる素晴らしい役割だと思っています。
「間」をつきつめれば、「食のある風景」に通じます。「素敵なキッチンづくり」は、「素敵な暮らし」への近道だと、私は気づきました。
キッチンといえば「システム・キッチン」など最先端のキッチンを生み出したドイツです。ドイツ人の家庭を定期的に訪問するようになって30数年が過ぎますが、私が見てきたドイツのキッチンは、豪華でもなく、あっと驚くような仕掛けもなくシンプルで使いやすいのです。それでいて、日常生活を楽しむ「大胆素敵!」のような個々の発想があり、家庭のなかで最も存在感のある場所なのです。「3つの間」を生かし、更に「場」つまり素敵生活のステージへと演出しているように思えます。◇その人、その家らしさを
結婚後に始めたキッチン・スペシャリストはまだ道半ばですが、主婦として子育てをしながら、キッチンから教わったことが「100の家庭があれば100のキッチンがある」ということです。「その人らしさ、その家らしさ」の味わいを引き出すことにあります。この基本的なことは躾や子育てに通じます。そしてなによりも私自身の素敵生活の支えとなっているように思っています。
写真(本紙に掲載)は、ドイツの家庭の食卓テーブル。生け花が耐えることなく飾られ、グラスのなかのローソクの灯りが、温かく素敵な空間を演出しています。(もりた・ひろこ=キッチンスペシャリスト)
=おわり=













