企業の理念を聞く 常日頃(43) ショップネット社長 上田匡利氏 商業施設を企画・開発 消費単価よりも客数重視
住宅新報 2010年7月13日 号 7面
ショッピングセンターのテナント入れ替え、メディカルビルの企画・リーシング、飲食店のプロデュースなど、手掛ける仕事は幅広い。会社設立から14年。「楽な時はなかった」という厳しい世界だ。前職は大手のオフィス仲介会社に勤務。地域住民に喜ばれるような商業施設がつくりたくて独立した。京都生まれの京都育ち。実家や友人宅などを活用した『町屋再生プロジェクト』を現在計画中。シェアハウスと店舗のコラボレーションなどユニークな企画が生まれそうだ。
会社を設立した96年は、住宅金融債権管理機構が発足し、翌97年は山一証券が破たんするなど金融不況の真っただ中。大手仲介会社を辞めるのには、相当な勇気が必要だったはずだ。
「まだ30歳代になりたての頃。夢を実現したいという思いの方が勝っていましたね。仲介の仕事をしていましたが、成約したら終わり、ではなく地域にもっと深いところでかかわっていきたいという気持ちがありました」
21世紀に入った頃から仕事が軌道に乗り始める。
NTTDATA品川ビル、亀戸サンストリート、千歳アウトレットモール、新神戸オリエンタルアベニューなどの企画、リーシングといった仕事が次々と入ってくるようになった。最近は出店開発や業態開発のコンサルティングなど、仕事の幅も広がり始めている。施設の客数増加対策を含むPM(管理)も受託している。
「仕事が成功したといえるためには、オープンしてから毎年少しずつでも客数が増えていくことです。1人当たりの単価は落ちても、集客を伸ばしていくことが目標になります。そのためにも、テナントの入れ替えはかなり重要な仕事になっています」
統計上の景気は底を打っても、消費者の財布のヒモは緩んでいない。「1回で何万円もかかるような高級店よりも、何度も足を運んでもらえるような店づくりがしたい」という。
収益安定化事業として自社が出資し、オペレーターは育成も兼ねて任せている中華料理の「好好(ハオハオ)食堂」(地下鉄丸の内線後楽園駅ビルにあるメトロ・エム後楽園5階)はまさに大衆料金だ。隣に誘致した「エーゲ海」もリーズナブルな価格で、珍しいトルコ料理が楽しめる。
「商業施設開発で難しいのは、立地は不変ではないということ。世代・景気・周辺環境・人口動態と共に変化していく。また、旬であったはずの業態も立地同様不変ではない。その常に変化していく環境の中で地域にマッチし、住民から喜ばれる施設を提供していくことが最大の喜び」
生まれ育った京都でも今、時代の変化の中で町屋の存続が危ぶまれている。実家もそうだが、学区内にある小・中学校時代の友人宅では子供が出て行った広い家に両親が2人だけで住んでいるところが多い。
何もしなければ、いずれ建て替えられ、町屋が並ぶ懐かしい光景は消えてしまうだろう。そこで、東京でシェアハウスを展開して成功している不動産会社と組んで、町屋再生に乗り出す計画が進められている。
「私の実家でも5、6人は住める。更に1階にテナントを誘致することができれば経営的にも幅ができる」
そういうユニークなシェアハウスとして活用することで、京町屋を残していくことができたらと考えている。
ヨーロッパには『建物は歴史の生きた教科書』という言葉がある。だから、めったなことでは建物を壊さない。そこには、地域と歴史を愛する人たちがいる。ショップネットの企業理念は、地域のために、地域の人たちが誇れる施設をつくることだ。町屋再生プロジェクトはその正鵠を射た事業となるだろう。
(本多
信博)
<会社概要>所在地=東京都文京区小石川2-3-4第一川田ビル3階設立=96年5月資本金=300万円電話03(3868)9531













