(14面からの続き) 「音」へのこだわり、形に 『家族の絆』もプランに盛り込む
住宅新報 2010年7月27日 号 13面
アパート暮らしから一戸建て建築を決意し、埼玉・伊奈町の緑豊かな閑静な住宅街に土地を購入していた施主の山田さん(仮名)。いくつものハウスメーカーや建築家へ設計・見積もりプランを依頼していたものの、決め手に欠け、逡巡する日々が続いた。そんな中でポウハウスに辿りついたのは、雑談のなかで出ていた「楽器工房」への夢をコンセプトにしたプランだったから。実は土地を用意していたのは「いずれは敷地内に楽器工房を増築したい」という夢があった。それがすでに盛りこまれていたほか、「デザイン、価格、タイミングの3つ」がそろい踏みしたということらしい。
プランのポイントは、居住空間の母屋とは別棟に設けた離れ=楽器工房。
母屋は、1階は友人を招いてのパーティーもできるパブリックスペースのLDK。スキップフロア形式にして、空間の心理的変化や広がりとともに、家屋内のさりげないつながりを作り出した。また2階は家族のためのスペースで、奥様のセンスを活かしてホテルライクなモダン仕様とした。向き合って建つ別棟の離れは、母屋とは1階部分のみセミアウトドア空間で隔てる四角いシンプルな構造。倉庫であり、工房であり、楽器コレクションのための収納庫。楽器づくりに没頭できる独立した空間である。
「エレキギターづくりというのは、木の選定から、テンプレートという型の制作、切り出し、接合、仕上げまで、たくさんの工程があります」と山田さん。つまり、工房では木作業など騒音が出るうえ、木や金属を削るために粉塵が飛び、さらにニスなどの臭いが立ち込める。工房を別棟とすることで騒音や異臭を切り離すことができたが、この家のもう1つの特徴は、母屋と工房とのつながりを意図したことにある。双方に大型開口部
その1つが、向かい合って建つ双方に、大型の開口部をつけたこと。母屋の奥様の書斎からは、窓越しに離れの工房でご主人が趣味に没頭する姿がみえる。更にこの書斎、工房側とあえて視線を合わせるため畳空間とし、掘り炬燵式の造り付けデスクを設けた。パソコンでの作業や読書をする奥様と楽器づくりに励むご主人の視線がときに交錯するという仕組みだ。更に、母屋と離れのあいだの中庭には、ハナミズキのシンボルツリー。花、緑葉、紅葉、実と四季の変化を双方の住空間に採り入れるという日本的住空間の発想でもある。
「自分の音を探したい」という想いから、楽器づくりにのめりこむようになった山田さん。実は音響機器メーカー勤務で、この離れで商品開発のための実験を行うこともある。現在は子育てに時間をとられることが多いとはいうものの、「いずれは好きなだけ音づくりをしたい」という。更に--中庭に向かって双方の窓を開け放ち、自作楽器でセッションパーティーを開きたいという夢も膨らみ始めた。設計のポイント
ポウハウス
木村美佳子氏
楽器工房の件は、当初、後から敷地内に増築したいというお話でした。
しかし私たちは、最初から「離れ」として工房の確保を提案しました。それは、母屋である「暮らし」と仕事にも関連される「音」を空間的に切り離すことが重要だと考えたからです。
ポウハウスは、モダンなデザインでありながら「和の心」の継承を家づくりの基本コンセプトにしており、「離れ」という日本的な伝統をこの家に採用することが望ましいと閃(ひらめ)きました。2つの建物の真ん中には、ハナミズキがシンボルツリーとしてあり、季節ごとの味わいも和のテイストとして積極的に取り入れたものです。また完全な離れではないところも、この家のミソです。仲の良いご夫妻が、お互いの趣味を尊重しつつ、どのように距離感を持たせるか。そこで、窓越しに目線でつながるという工夫になりました。
この家には塀はなく、植栽がオブジェのように境界に配置してあります。外にも開放させながら、外部の吹き抜けを介して光と風が抜ける、離れていながら家族の視線が通いあう「離れない『HANARE』」になりました。※住宅の概要◎構造:木造2階建て◎家族構成:夫婦、子供1人◎延べ床面積:131.10平米(39.57坪)◎竣工:2008年5月◎設計:ポラテック株式会社
ポウハウス一級建築士事務所(木村美佳子)/住所:埼玉県越谷市南越谷1の16の3/電話:0120(321)549、http://www.pohaus.com













