大言小語 『田コロ』とその時代
住宅新報 2010年6月15日 号 1面
自分の周りは敵だらけ、いわゆる『アウェイ』のとき、人はどう行動するだろう。萎縮してしまうか、あるいは空威張りするか。この人はいきなりマイクを持ち、敵やそのファンに向かい言葉を発した。「こんばんは」。
▼先日、元プロレスラーのラッシャー木村さんが亡くなった。68歳だった。国際プロレスを率い、金網デスマッチという特異なジャンルを築いたが、団体は消滅。戦いの場を新たに求め、アントニオ猪木率いる新日本プロレスの会場に乗り込み、マイクで啖呵(たんか)を切るはずだった。失敗した。しかし、その無骨だが人間味あふれるキャラクターが人気を呼び、その後、木村さんのマイクパフォーマンスは名物となった。
▼「こんばんは事件」が生まれたこの会場は「田園コロシアム」。高級住宅地、田園調布にあった。田コロ(でんころ)と呼ばれ愛されたが、89年に閉場。今は高級マンションが建ち、その面影は近くの児童公園の名前に残っているだけだ。しかし、幾多の名勝負を残した「田コロ」は多くのプロレスファンの心に刻まれている。













