社会を読む「不動産学」-明海大学 第19回 不動産経営計画論(2)
住宅新報 2009年1月27日 号 12面
賃貸住宅の建築計画
規模計画の次は、建築計画を考える。建築計画の本は沢山あるものの、事業性との関連記述は十分とはいえない。賃貸事業の建築計画では、安全、快適、効率を踏まえ、将来の競争力に配慮する。安全
2方向避難が基本となる。一定規模以上の建築物では避難階段を2カ所以上配置する必要がある。東京都では建築安全条例により、窓先空地が必要になる。火災時の救急活動等のために利用する空間であり、駐車場等に利用することはできない。建築基準法にはない規定なので注意する。
共用廊下と共用階段が避難通路となる。わが国では廊下も階段も屋外に設置することが多い。鉄骨むき出しのものもあり、外観上は優美になりにくい欠点がある。歩行音も気になるところである。床面積に入らない、必要な有効幅が小さく、省スペース省コストであることが多用される理由である。快適
住宅の居室には採光が必要である。3LDKの場合は、LDと3寝室が居室となる。わが国では南面する居室への評価が高い。4居室を南側に並べれば快適性は高く、競争力も高まる。しかし、現状、図(住宅新報本紙に掲載)中の基本平面構成図のような部屋割りが多い。南側(ベランダ側)および北側(外廊下側)にそれぞれ2居室を配置して採光を確保する。住戸の間口と奥行きの関係は1:2が目安である(図では81平米台の住戸を示す)。鰻の寝床のような形状にすると容積率を消化しやすいことが理由である。これは供給者の論理である。
住宅が余剰となり、競争が激しくなると、需要者の論理が台頭する。間取りはより快適性の高いものに移行する可能性が高い。
3LDKの住戸は4居室のほか、トイレ、洗面室、浴室、納戸などを含む。これらを2か所のユーティリティ(UT)に納めると、全部で6つのブロックで構成される。基本構成では、南面に配置されるのは2ブロックである。代替案1は3ブロック、代替案2は5ブロックが配置される。
これに伴って快適性が高まる。超高層マンションの人気が高い理由の一つは、代替案2に類似する平面構成をしているからである。この傾向は超高層以外にも伝搬する。快適性の追求により、住戸の形状が変化して建築計画は根幹から変化する。
代替案3はメゾネット住戸で玄関は中廊下に面する。風雪雨をシャットアウトできる、空調やじゅうたん仕上げが可能である。快適性は外廊下とは比べるべくもなく、ホテルのような空間構成となる。超高層では共用廊下相当部分が屋内であることも人気の秘訣である。
快適性を重視する、容積率の限度まで利用するわけではないといった場合には、代替案を検討すべきである。効率
賃貸用建築物の設計の合理性を示す指標としてレンタブル比(賃貸有効率)がある。延べ面積に占める賃貸面積の割合である。事業収支を配慮した建築設計はレンタブル比が高いといえる。床面積に含まれない外部廊下、外部階段が多用されるもう一つの理由である。
しかし、法律の変更により、共同住宅の共用廊下等の床面積は容積率には含めないこととなっている。今日ではレンタブル比を高めるために、外廊下、外階段を使う理由はない。快適性を高めて将来の競争力を担保するために見過ごせないポイントである。(明海大学不動産学部教授
中城
康彦)













